沖縄市のゲストハウスで誰にもみとられずに「孤独死」した客の40代男性が宿泊していた部屋の特殊清掃をしたが、代金が支払われなかったとして、同市の「沖縄特殊清掃遺品整理社」(国吉吉仁代表)が、ゲストハウスに対して代金22万8000円を求め、沖縄簡易裁判所に提訴したことが16日までに分かった。5月27日付。訴状によると、ゲストハウス側は「遺族に請求するべきだ」として支払いを拒んでいる。孤独死をした人は財産がなく、親族とも疎遠となっている場合が多く、部屋の原状回復費用を巡って県内でもトラブルが起きている。
訴状などによると、特殊清掃業者は1月30日にゲストハウス側の依頼を受け、死後約1週間を経て発見された男性が使っていた部屋を清掃したとされる。部屋の原状回復をするため、床や壁紙を張り替えた。その上で消臭と消毒をして2月中旬に引き渡した。提訴についてゲストハウスの経営者は本紙の取材に「ノーコメント」と述べた。
部屋の原状回復義務は遺族でも相続をしなければ発生しない。国吉代表はゲストハウスの経営者から紹介を受けて、県外に住む男性の弟に連絡した。弟は当初、代金を支払う意向を示したが後に連絡が途絶えた。残された遺品から男性に子どもがいたことも分かったが、住所は不明だ。
国吉代表は経営者に支払いを求めたが「うちも被害者」と述べ、応じなかったという。
国吉代表は「亡くなった男性はかわいそうだが、その後の対応がいろいろおかしい。今後も同様の事例が起きるかもしれない。やむを得ないが、裁判でけじめをつけたい」と話した。
本紙が琉球大学大学院医学研究科法医学講座の協力を得て実施した調査では、16年1月~18年11月までの約3年間で、県内で少なくとも431人の孤独死が確認されている。