名護市辺野古の新基地建設に伴うサンゴ類の移植許可を巡る審査で国地方係争処理委員会が県の主張を退けたのは、2013年の埋め立て承認は有効であるとの前提に立つからだ。有効である以上、護岸の造成工事ができるのだから、避難措置としてサンゴ移植の必要性があるというものだ。結論の内実は、県の対応に関する問題点の指摘に終始しており、県が審査を求めた、農水省による指示内容の問題点の議論は避けた形だ。
県が、地盤改良に伴う変更申請が許可されなければ工事は続行できず、サンゴ移植の必要性もないとしたことに対しては、変更申請が許可される可能性がある限り「承認を得ることを前提に(現行の)承認効力は維持される」と一蹴した。
だが、地方自治法は国の関与を必要な最小限度とし、地方の自主性や自立性に配慮するよう求めている。この点からすれば、例え何らかの指示をするにせよ、「早く判断すべきだ」と促すにとどめる方法もあり得たはずだ。実際、国と県双方から陳述を受けた際には、委員からそのような質疑も出た。しかし議論では「そこまで論点は至っていない」(富越和厚委員長)という。
今回の係争委の結論は、地方自治の趣旨を踏まえて議論を尽くしたのか、疑問符が付く内容だ。 (知念征尚)