孤独死の現場、その生に思いを…特殊清掃、若手職員を変えた1枚の写真


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厳しい孤独死の現場でも自ら率先して作業をこなす新垣真嘉さん=18日、本島南部

 【沖縄】漂う悪臭、散乱するごみやハエの死骸…。誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」や、自殺現場の部屋の片付けやリフォームをする沖縄市の「沖縄特殊清掃遺品整理社」(国吉吉仁代表)で奮闘する若者がいる。特殊清掃業はむごたらしい現場に入ることもあるため、職員が定着しづらい。そんな中、若手の新垣真嘉(まさよし)さん(30)=浦添市=は国吉代表の右腕としてほとんどの現場を任されている。新垣さんは最初に入った現場で孤独死した人の惨状に感情移入したことで続けてきた。「みんながやりたがらない仕事だが、社会に必要とされている」との思いを抱き、増え続ける現場に今日も入る。

 新垣さんは10代のころ、関東で働いていた時に国吉代表と知り合った。国吉代表が約10年前に沖縄市で立ち上げた同社に2016年に入社した。

 初めての現場は60代男性の孤独死した部屋だった。「最初はこの仕事は続けるのは無理だと思っていた」という新垣さん。だが部屋の中で見つかった男性の写真を見て感情が揺さぶられた。自身の両親と同年代で家族もいたようだった。新垣さんは「自分の親と同年代の人が孤独死して、隣近所から迷惑がられていた。かわいそうで、他人だけど感情移入してしまった」と振り返った。

 それ以来、人の入れ替わりが激しい中でも仕事を続けてきて、今は会社の中心的存在の1人だ。仕事の依頼は新型コロナウイルスの影響を受けずに、昨年よりも増えて週1回は現場に入る。日頃から防護服とマスクを装着し、部屋の消毒も徹底するため感染の不安はないという。

 新垣さんは「年を取って周りの親しい人が亡くなることもある。万が一の時には自分が現場に入る。それくらいの気持ちで仕事をやっている」と強調した。

 国吉代表は「これまで何人も入っては辞めた。新垣は厳しい現場にもどんどん入って、遺族に寄り添って仕事をしている。若いのに感心だ」と目を細めた。
 (梅田正覚)