【記者解説】石破氏発言の影響は? 新基地検証に現実味 辺野古回帰の懸念も拭えず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
石破茂元防衛相

 自民党の石破茂元防衛相が、米軍普天間飛行場の危険性除去には名護市辺野古への移設が「唯一の解決策」とする従来の政府方針に物言いをつけた。「ポスト安倍」候補の1番人気で防衛政策に明るい石破氏が「唯一」に異を唱えたことで、辺野古移設検証への現実味を帯びてくる。

 ただし石破氏の「検証」には条件が付く。建設予定海域の軟弱地盤など工事の問題点に加え、米海兵隊の抑止力維持のための高速輸送手段の確保の検討も併せて行う必要性を指摘した。

 「検証」の結果、民主党政権のように再び辺野古に回帰する懸念も拭えない。石破氏は民主党政権時の首相の鳩山由紀夫氏と抑止力について議論したという。それから10年を経た今、持論だった高速輸送能力の保持を念頭に米海兵隊の移動能力を下支えすることで、「時間と距離の壁」を乗り越え、沖縄という地理的条件をクリアする議論につなげられるかも課題だ。

 石破氏は世論調査などで「次の首相にふさわしい自民党の政治家」として人気は高い。これまでの総裁選は全国の党員票を集めた一方、党内の国会議員の票が集まらなかった。政局をにらみ、水面下の動きを活発化させる石破氏。ここへ来て普天間飛行場の移設を巡り党内には、現行計画の微修正や嘉手納統合案が浮上しているが、石破氏の提起は県内移設再考の新たな契機になり得る。
 (滝本匠)