<解説> 政府が二酸化炭素(CO2)の排出が多い非効率な石炭火力発電所の削減方針を表明し、2030年までの段階的な休廃止を検討する施設に沖縄本島の3発電所6基が含まれている。世界的な潮流となる脱炭素社会に向け、電力量の6割以上を石炭火力に依存する沖縄は、CO2の排出抑制に真剣に取り組まなければならない。その上で、全国と異なる離島県の事情に考慮することも必要だ。
沖縄県は地形的に大規模な水力発電ができず、発電電源を化石燃料に頼ってきた。中でも石炭は低価格で価格も安定的なため、市場規模の小さい沖縄で主要な電源となってきた。
沖縄電力の供給する電力量のうち6割以上が石炭による発電で、全国の大手電力会社の中で最多の割合となっている。
環境省によると、同じ熱量を得る際のCO2排出量は、石炭を10とした場合、液化天然ガス(LNG)は5・5と環境負荷が小さい。今後、LNGの構成比を増やすことは有力な対策となる。沖電の本永浩之社長は19年10月の会見で、LNG購入量を現在の25万トンから将来的に40万トンまで増やす方針を示している。
ただ、再生可能エネルギーを含めた燃料変更による調達価格の上昇や、高効率発電所の建設などの投資は、利用者の電気料金に跳ね返る可能性がある。沖縄流「ベストミックス」の在り方を、事業者だけでなく消費者も模索していく必要がある。
一方で、経済産業省の石炭火力の縮小方針は原子力発電所の再稼働を前提としている。政府の目指す電力構成は、18年度現在で32%を占める石炭を30年度に26%に削減しながら、再生可能エネルギーは17%から22~24%程度まで引き上げ、原子力は6%を20~22%まで増やすものだ。
原発の再稼働が進むかどうかは見通せないが、全国の大手電力で唯一原発を持たない沖縄県にはなおさら、政府の計画はそのまま当てはめられない。送電網が他県とつながっていない離島県の安定的な電力供給や価格の急激な変化を避けるためにも、政府には慎重な検討が求められる。
(沖田有吾)