【深掘り】米軍コロナ61人、検疫及ばぬ聖域 政府は追従「しっかりやってくれている」


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米軍基地内での感染者大量発生や県の対応策について説明する玉城デニー知事の記者会見 =11日午後5時、県庁

 在沖米軍基地内で7~11日に確認された新型コロナウイルス感染者が61人に上った。県は当初、米軍の了解を得られていないとして感染者数を明らかにしてこなかったが、11日夜、急転直下、感染者数を公表した。日本政府はこれまで、米軍の感染状況や情報共有の在り方について問題はないとの見解を繰り返してきた。ここにきての感染急増は、日本側が米軍基地内の実態を把握できないまま、米側の説明のみをうのみにする対応の限界を露呈している。

 沖縄で米軍関係者の感染が増え始めた10日、菅義偉官房長官は記者会見で「米軍病院から地元保健当局に通報がなされ、感染者の行動履歴の追跡などを含め必要な情報共有が行われている」と強調した。河野太郎防衛相も「米軍の中でもコロナの感染症対策は非常に優先順位の高い事案なので、しっかりやってくれていると認識している」と語っていた。

 ■県庁内の動揺

 直後の11日、沖縄の米軍基地だけで60人を超える米軍関係者の感染が発覚。県内で米軍関係者を除いて感染が確認されている累計148人の3分の1を超えた。政府関係者は「ここまで増えるとは」「びっくりした」と驚きを隠さない。

 「米軍の防止策について強い疑念を抱かざるを得ない」。玉城デニー知事は11日夕の会見に姿を現すと、厳しい表情で米軍の対応に不信感を示した。事前に決まっていた質問数を超えても記者からの質疑に応じ、強い危機感を持って対応する姿勢を見せた。

 県保健医療部には11日午前の段階で、米軍普天間飛行場とキャンプ・ハンセンの新規感染者が45人だという知らせが入った。これまで県の対策本部会議では県外からの移入例への対応が主題だったが、この日午後の会議は米軍基地内の集団感染に関する協議が大部分を占めた。

 ■トップ会談

 県はこれまで米軍関係の感染者数の公表に及び腰だった。公表することで、米軍からの情報提供がなくなることを恐れていたためだ。県の対応には県内の医療関係者から疑問の声が上がっていた。県も公表の必要性は認識しており、米軍との調整が悩みの種だった。

 玉城知事は11日夜、在沖米軍トップのステーシー・クラーディー四軍調整官との電話会談で「人数を県から公表してもよいか」と尋ねた。クラーディー氏は「県が公表することは妨げない。たとえ公表したとしても、報告は続けたい」と理解を示した。その後、県は米軍基地内の感染者数をまとめて発表した。

 県幹部の一人は「米軍も今回の増え方には危機感を持ったのだろう。人数が分からないことによる県民の不安を繰り返し伝えてきた」と胸をなで下ろした。一方で「今後さらに広がらないか不安だ」と感染状況には気が抜けないことを強調。今後、米軍と情報交換を続け、感染対策の統一を模索したい考えを示した。
 (當山幸都、明真南斗、西銘研志郎)