焼きたてのパンやピザに刺し身、すし、島豆腐や野菜まで、日用品も満遍なくそろう。今コンビニで扱っている商品はスーパーとほとんど変わらない。人々の行動様式の変化に対応してきたコンビニの現在進行形の姿だ。
スーパー化している背景について、ローソン沖縄の担当者は「スーパーは遠くて行けないという高齢者は少なくない」と指摘し、少子高齢化を要因の一つに挙げる。
沖縄ファミリーマートの野﨑真人社長は「母親たちは仕事を終えて子どもを迎えた後に、スーパーに行って大きな荷物を抱えるよりも、近くのコンビニにパッと車を止めて買い物している」との見方を示し、働く女性の「時短」意識が買い物様式を変えていると指摘する。
■全国は飽和状態
少子高齢化や働き方改革に伴う人手不足は、コンビニのビジネスモデルの根幹とも言える24時間営業を変えようとしている。県内でも深夜営業を取りやめた店がローソンで3店舗、ファミマで1店舗ある。沖縄ファミリーマートは時短営業について県内の全加盟店に意向を確認しており、9月には時短店舗が増える可能性もある。
レジの姿も変わりつつある。ローソン沖縄は2年前、顧客が自分で会計できるセルフレジに対応できる機材を導入。このため全店でレジのセルフ対応が可能となっており、現在、試験的に実施している店舗もある。
国内のコンビニ事業は転換期を迎えている。日本フランチャイズチェーン協会によると、2019年末のコンビニ大手7社の店舗数は5万5620店で、18年末に比べて123店減少した。年間の店舗数が初めて減少に転じた。店舗増加で拡大してきたコンビニの成長戦略は変革を迫られている。今月8日には沖縄ファミマの株式の49%を保有するファミリーマートが伊藤忠商事の完全子会社となることが発表された。
一方、沖縄は店舗数の伸び率は全国一だ。販売額についても、19年度の沖縄ファミマの平均日販(1店舗当たりの1日の売上高)は67万8千円と過去最高を記録した。県内のセブン―イレブンの日販は、業界内では「全国(65万6千円)より1割増しではないか」とみられている。
好調な県経済、インバウンドを含む観光客の多さ、セブン進出で業界全体に注目が集まったことが県内コンビニ市場を拡大させたと言える。
■withコロナ
しかし今年4月。新型コロナウイルスで状況は一変した。日本銀行那覇支店によると、10年6月からプラスで推移した県内コンビニ売上高の前年同月比はマイナスに転じた。観光客の激減、外出機会減少の影響をもろに受けた。
環境が大きく変わったが、セブンは「出店計画に変更はない」としている。観光客の回復には時間がかかるとみ見られ、縮小した市場での競争はさらに激しさを増す。帝国データバンク沖縄支店の水城利治支店長は「新規出店の盛り上がりは長く続かない。各社がwithコロナ時代にどう戦略を立てるのか。今期が本当の戦い」と指摘する。
全国と同じ品質の人気商品で勝負するセブン。独自の商品開発で強みを発揮するファミマ。親会社サンエーとの協業効果を生かすローソン。時代に合わせて変化しながら、生き残りをかけた戦いが続いている。
(玉城江梨子)