【深掘り】米軍感染情報はどこに? 菅氏「私もどうしてか分からない」 政府「共有」知事「ないのは異常」


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「異常としかいいようがありません」と記す玉城デニー知事のツイッター

 2013年に日米合同委員会で確認した覚書に基づいて海軍病院と県は情報を交換している。県によると、米軍は感染者数を共有しているものの、検査総数や検査日は知らせていない。陽性率も算出できない。

 肝心の行動歴についても県に届いているのは普天間基地で7日に判明した5人に関する情報に限られ、しかも一部だ。その後、普天間飛行場で66人、キャンプ・ハンセンで22人の陽性が判明したが、彼らの行動歴は不明なままだ。

 菅官房長官は13日の記者会見で認識の食い違いについて理由を問われ「私もどうして生じているのか分からない」と語った。

 県幹部の一人は「確かに患者が数人のころは情報は比較的入ったが、数十人に上ってから滞っている。菅官房長官には正しい情報が入っていない」と指摘した。非常事態だからこそ、政府出先機関の役割も問われるが、機能しているか疑問符が付く。

 県議会は10日、感染者や濃厚接触者の行動歴など具体的な情報開示を米軍と日米両政府に求める決議と意見書を全会一致で可決した。決議・意見書案を説明したのは、自民党県連幹事長で自民会派の代表を務める島袋大氏だ。「在沖米軍にも感染防止対策の徹底が求められる」と強調した。

 自民県連幹部の一人は菅氏の発言そのものへの言及は避けつつ「全会一致で可決した意見書が全てだ。より踏み込んだ情報を出してほしい。情報が共有されないと県民も不安になる」と話した。日本政府が米軍の情報提供が適切であるとして問題を放置する中、重要な情報が出てこないことについて海軍病院と直接やり取りする県に矛先が向かう場面もある。

 玉城デニー知事は取材陣に「全く情報がない中で我々に何をしろというのか。打つ手立てがない」と語る。「一義的には国がやることだ。日米の関係だから。沖縄(の問題)に矮小(わいしょう)化するのはよくない」といら立ちを見せた。日本政府に米軍への働き掛けを求め続ける考えだ。
 (明真南斗、吉田健一)