米軍関係者を乗せたタクシー運転手の80代男性が新型コロナウイルスに感染したことを受け、タクシー業界には戸惑いが広がっている。売り上げが激減していた業界で回復の兆しが見えかけていただけに、終わりの見えない状況に落胆の声が聞こえる。
「米軍関係者はマスクを着用せず、人数制限も守っていなかった。ゲートでも人数を確認することはなく、新型コロナ対策や管理はざる状態だった」。県内全域の米軍基地を往来するタクシー運転手の男性(56)=うるま市=は力なく語る。米軍関係者の新型コロナ感染拡大を受けて基地に出入りするタクシーは乗客を2人以内に制限するよう米軍と確認してきたが、3人以上の家族連れなどで乗り込むこともあったという。男性は「売り上げが減る中で乗せるしかない。持病を持っているので、感染者を乗せていたかもしれないと思うと怖い」と青ざめた。
沖縄市のタクシー運転手の60代男性も「いつ自分が感染してもおかしくない」と戦々恐々の日々を過ごす。米国独立記念日の4日や翌5日は、米兵とみられる外国人を北谷で乗せており、不安は募る。外国人らはマスクを着けていなかった。男性は「いくら県民が感染に気を付けても、彼らが無防備だとどうしようもない」と話す。積極的に情報を公開しない米軍の対応を批判し「しっかりと情報提供をしてほしい」と求めた。
県ハイヤー・タクシー協会によると、感染拡大を受けて乗り入れが全面禁止になった米軍基地は、普天間飛行場、キャンプ・ハンセン、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の3施設。同協会の東江一成会長は「県経済の回復も必要だし感染拡大も避けたい、痛しかゆしの状態だ。軍だから規律正しくしているかと思ったが、それが足りていなかった」と指摘し、今後の徹底した対策を求めた。