情報開示なく一方的リスク 民間施設使用で住民の不安増幅<米軍大規模感染>5


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在沖米海兵隊が新型コロナ対策として人事異動者の隔離施設に北谷町のホテルを使用することを受け、沖縄防衛局に抗議に訪れた野国昌春北谷町長=10日、嘉手納町の沖縄防衛局

 6月30日午後6時10分、業務終了後の北谷町役場の電話が鳴った。在沖海兵隊が新型コロナ対策として海外からの人事異動者の隔離施設に同町のホテルを借り上げることを知らせる、県基地対策課の職員からだった。「町の考えを聞きたい」と言う県の担当者に、町職員は「すぐには回答できない」と電話を切った。人数や使用期間など詳細な情報が説明されないまま、“感染大国”米国からの異動者の基地外での隔離が始まった。

 「町民や県民のこれまでの努力をむげにする行為だ。看過できない」。今月2日、野国昌春町長は来庁した沖縄防衛局と外務省沖縄事務所の担当者に説明を求めた。しかし、「基地内の容量が足りないため」との回答のみで町が求めた詳細な情報は最後まで示されなかった。

 「基地内で収めるべき話だ」「住民を巻き込むな」。町民からは一斉に怒りの声が上がり、ホテル関係者は風評被害への懸念を訴えた。町などの反発を受け、在沖海兵隊は15日に入国者の隔離をやめ、出国者の滞在のみにホテルを使う考えを示したが、ホテルを使用する出国者に症状がない限り、PCR検査を実施していない。

 この間、県内米軍基地では大規模感染が確認され、7~11日には61人、12~13日には34人、14日には感染者が累計で100人となった。「そもそもなぜ基地外の施設を使うのか」「出国者のみの使用というのも信じられない」。クラスター(感染者集団)が発生する事態の中でも情報を公開しない米軍に不信の声は強まっている。

 16日には米軍関係者を乗せたタクシー運転手の感染が確認され、県は基地関係者との接触が感染経路と推定した。大規模感染が発生した米軍による民間施設や公共機関の利用で、県民の感染リスクは高まる一方だ。

 影響は離島にも及ぶ。伊江島補助飛行場がある伊江村。伊江港と本部港を結ぶ村営のフェリーは毎日、複数の米軍人が利用している。村の関係者によると、1日10~15人程度で、軍用の大型トラック3台ほどに乗り込み、乗船の際も詳細な所属は明らかにしない。

 在沖米海兵隊は11日付で、新型コロナに関する警戒レベルを引き上げた。公共交通機関の利用は禁じられているが、同フェリーでは12日も民間人と共に乗船する米軍関係者の姿を本紙記者が確認した。同飛行場近くで農家を営む平安山良尚さん(58)は、「いつ島で感染者が出てもおかしくない。しっかりとした情報を公開してほしい」と語った。
 (新垣若菜、喜屋武研伍)