GoTo迷走 補償方針でキャンセル拍車か 観光業界「期待していたのに」


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 国内の旅行喚起策「GoToトラベル」の開始が22日に迫っているが、県内の観光業界では予約の停滞やキャンセルの動きが出ている。政府が東京除外による旅行のキャンセル料を補償することが正式に決まれば、さらにキャンセルが急増すると懸念する声もある。観光関係者は「期待していたものとのギャップに驚いている」「(政府の動きが)かなりドタバタで振り回されている」とため息をつく。

県をまたいだ移動は再開しているが、まだ以前のような人通りには戻らない国際通り=20日、那覇市松尾

 今月10日に事業の開始日が発表されて以降、客室数300室以上の那覇市内のホテルでは20室ほど予約が入ったが、現在は動きが止まっている。7月の客室稼働率は30%程度となり、8月は「GoToトラベル」の効果で60%台まで回復すると見込むなど大きな期待を寄せていた。

 同ホテルの総支配人は「政府がキャンセル料の補償を決めれば、迷っていた人が旅行を中止するだろう。GoToには期待していない」と肩を落とす。

 2019年度に沖縄を訪れた国内観光客697万8千人のうち、東京方面からが336万3千人と約半数を占める。政府のキャンペーンから東京が除外されたのは、多くの観光事業者にとって痛手だ。

 「夏の需要を取れなければ倒産も出てくるのではないか」との見方を示す関係者もいる。

 恩納村のリゾートホテルでも東京除外の発表後に数件のキャンセルが出始めている。同ホテルでも通常、東京からの宿泊客が全体の4割を占めるといい、影響が大きい。

 社員の一部を自宅待機させる対応が続いている那覇市内の旅行社は、8月から通常通りの出勤体制に戻す予定だった。だが、沖縄から東京へのビジネス出張の手控えなどを含め、夏の需要が予想よりも下がるとみて社員の休業を続けることを決めた。7月の売り上げは前年の3~4割ほどで、8月はさらに下がる可能性もあるという。

 旅行者の代表は「大阪でも感染者が増え始めている。まずは石垣や宮古など、近隣の旅行需要から獲得していくことになるだろう」と話す。

 全日本空輸(ANA)によると、8月の沖縄関係路線の搭乗予約は前年比の4割程度となっている。例年であれば、既に夏休みの航空予約は埋まっている時期だ。県内リゾートホテルの代表は「7~8月のトップシーズンに集客できなければアウトだ。どうにか需要を獲得しなければ」と神妙な面持ちで語った。