22日に始まる「Go Toトラベル」に対し、玉城デニー知事は県民の安全安心の観点から水際対策を強化するなどの対応を強調したが、事業実施の是非については明言しなかった。見切り発車的に開始を前倒しした政府に各自治体が振り回されている印象は否めず、実効性のある対策ができるかは不安も残る。
沖縄県は移入例を防ぐために、那覇空港到着時に発熱などの症状がある人を対象に抗原検査をする。検体の採取から判定まで短時間で完結できる態勢の構築を目指すとはいえ、強制力はなく旅行者が任意に協力する形のため、協力が得られるかは不透明だ。県が6月19日から運用している「旅行者専用相談センター沖縄(TACO)」では、発熱者が「先を急いでいる」として問診を受けなかった事例がある。
空港での検温では感知できない無症状感染者など、水際対策の網の目からこぼれる感染者が増加することも予想される。
県内では在沖米軍基地で大規模クラスター(感染者集団)が発生し、収束していない中で、県をまたいだ移動による移入例が増えれば、感染がさらに複雑な経路で広がる懸念はぬぐえない。
琉球新報が県内41市町村長に実施した緊急アンケートでは、約7割に当たる29人がキャンペーンは「延期すべきだ」と答えている。
事業登録の基準があいまいなことなど、拙速な開始によって現場は混乱を極めている。
政府は全国一律ではなく、今からでも各地域の感染状況に応じて仕切り直すことが求められる。
(沖田有吾)