日本兵からスパイの嫌疑 山城正常さん 捕らわれた日(37)<読者と刻む沖縄戦>


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現在の名護市田井等の集落

 那覇から共に行動していた仲間の一人にペルーの移民経験者がいました。山中でスペイン系の米兵と会話することがあり、食料をもらっていました。そのことを日本軍が疑った 羽地村(現名護市)田井等の収容地区に連行された山城正常さん(86)=南風原町=の家族は、自分たちが日本兵からスパイの嫌疑をかけられていたことを避難民から聞かされます。のです。

 「米軍に捕まるのが数日遅れていたら、日本兵に殺されていたかもしれない」と正常さんは語ります。

 田井等ではテントで過ごしました。「食事はピンポン球くらいのおにぎり一個。食料は足りませんでした」と山城さんは語ります。その後、田井等にある民家に移ります。母屋だけでなく豚小屋まで避難民でぎゅうぎゅう詰めでした。

 山中には敗残兵が残っており、食料を求めて田井等収容地区に姿を見せることもありました。避難民に注意を呼び掛ける放送がありました。

 「夜(ゆーる)、ふかんかい 出じてぃならん。日本ぬ兵隊(ひーたい)とぅばっぺーらってい鉄砲しいり殺(くる)さりーぐとぅ」(夜、外に出てはなりません。日本兵に間違われ、射殺されます)

 田井等では2年近く過ごしたと言います。米軍が那覇を占拠していたためでした。その間、山城さんは羽地の初等学校に通い、卒業後は田井等高校(現在の名護高校)に入学しました。