【深掘り】警戒レベル上げても自粛なし? 頭抱える沖縄県 観光支援どうする


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記者の質問に回答するため担当者と調整する大城玲子保健医療部長(右)=23日、県庁

 在沖米軍関係者の新型コロナウイルス感染が7月に入って急増する中、県内の感染者も徐々に増え続け、県は警戒レベルを第2段階「流行警戒期」に引き上げる方向で調整を進めている。警戒レベルが引き上げられれば、県外の感染拡大地域との往来自粛要請も対策として検討に入ってくる。政府の観光支援事業「Go Toトラベル」とともに始まった4連休のさなかであり、県は慎重に対応を検討する。25、26日は基地で働く従業員約800人を対象にしたPCR検査が実施予定で、検査の拡大に伴って感染者数はさらに増えていくことも想定される。

 4月に県内で感染が広がった時の主な感染経路は県外からの「移入例」とみられるが、7月に入り「米軍基地由来」とみられる県内感染者数も出始めた。移入例と米軍基地からの感染拡大という「ダブルパンチ」の事態となり、県の危機管理対応が問われる。玉城デニー知事は24日に今後の方針を説明する。

 自粛要請か

 「東京と大阪で感染者が増加し続ける状況がある。自粛要請も含めて議論しないといけない。ただ、Go To トラベルも始まっている。これは非常に難しい判断となる」。県幹部の1人は頭を悩ます。

 4~5月の国の緊急事態宣言で人の移動が制限され、観光産業が基幹の県経済はいまだかつてないほど落ち込んだ。県は6月から県内旅行の需要喚起策を打ち、Go To トラベルを契機に国内観光客を呼び戻して県経済を回復軌道に乗せることを描いていた。

 警戒レベルの引き上げに伴う移動自粛の要請は、県経済の立て直しの足を引っ張りかねない。県幹部は「警戒レベルを引き上げても、何もそのまま自粛に入る訳ではない。総合的に判断しないといけない」と語り、自粛要請をしない場合もあるとした。

 ただ、このまま感染が増え続けると、次の第3段階は「感染流行期」となり、県は再び緊急事態宣言を発令し、不要不急な外出や県外との間の移動自粛を要請する段階に至る。

 経済活動の回復と感染拡大防止のはざまで難しい判断が迫られる。

 基地従業員

 新型コロナに感染した在沖米軍関係者数は23日時点で計163人。2月からの県内感染者数とついに同数となった。基地政策を担当する県幹部は「最初から異常な人数だと感じ、いずれ県内の感染者数を上回ることはある程度見えていた」と苦々しく語った。

 基地従業員内でも感染への不安が高まっており、県はPCR検査の実施を国へ求めてきた。河野太郎防衛相は23日、今週末に普天間飛行場やキャンプ・ハンセンなどの基地従業員800人余りのPCR検査を実施する考えを記者団に明らかにした。

 23日は、基地内からの感染とは断定されていないが、嘉手納飛行場で働く基地従業員の50代男性の感染が判明した。米軍基地と県外からの移入例の感染拡大防止という、いずれも不透明な事態の対処に県は迫られている。

 県幹部は「本来は米軍がしっかりしていれば起こらなかった。沖縄はフェンス1枚で隔てての生活を余儀なくされている。他県では起こりえない事態だ」と語った。
  (梅田正覚、明真南斗)