[日曜の風・室井佑月氏]GoToには乗らない 沖縄に行きたい


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室井佑月 作家

 沖縄に行きたい。じつは行く予定であった。

 今の旦那と入籍したのが5月だった。そのとき、新婚旅行は沖縄ね、と盛り上がった。梅雨が明ける頃には、新型コロナウイルス感染症もなんとかなっているだろうと。

 しかし、その考えは甘かったようだ。この原稿を書いている17日、東京の感染者は280名を超えた。このところ感染者数は3桁がつづいている。収束どころか拡大しているようにも感じる。

 そんな中、政府が推し進めているのは、旅行代金の一部を支援して需要を喚起する「GoToトラベルキャンペーン」だ。このキャンペーンをやりたい側の理屈は、おかしなものばかりだ。西村康稔経済再生担当相は「感染が広がっていることについては注意しながら進めていかねばなりません」といった。菅義偉官房長官は「旅行者の方に『3密』の回避などを気をつけていただいたうえでGoToキャンペーンを活用していただきたい」といった。そして、政府の新型コロナウイルス対策の分科会の尾身茂会長も「旅行自体に問題はない」という見解を述べた。

 3密に注意しながらする旅行とはどういうものなの? マイカーで一人、人がいない場所を探すのか?

 だいたい当初の予定では、コロナの収束後にキャンペーンをするはずであった。それが、感染者が増えているのに前倒して決行。観光業者のためというなら、トンネル会社を通さず、そのまま観光業者へお金を出せばいい。そして、コロナのせいでヘタっている業種は観光業だけではない。

 そういえば、東京新聞労働組合がツイッターに「こうやって無謀な(コロナの)戦争に日本は突き進んでいきました…と後世、語られそう。いつも無謀な戦争と人命軽視はセット。『GO TO』まだいまなら止められる」と載せていた。本当にその通りだ。

 あたしは沖縄に行きたい。けど、沖縄が好きだからこそ、政府や御用学者のおかしな話に乗るわけにはいかない。

(室井佑月、作家)