米議会への働き掛け有効 県は取り組み進展明示を 髙良沙哉・沖縄大人文学部教授<揺らぐ「辺野古唯一」識者に聞く>⑤


米議会への働き掛け有効 県は取り組み進展明示を 髙良沙哉・沖縄大人文学部教授<揺らぐ「辺野古唯一」識者に聞く>⑤
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 ―政府はイージス・アショアの配備を断念したが、米軍普天間飛行場の移設先については「辺野古唯一」との姿勢を変えない。違いは何か。

 「イージス・アショアと辺野古の新基地建設はコストや工期がかかるなど類似点は多い。一方、沖縄で何か起こっても遠くのことだと考えられるが、陸続きの県外だとそうはいかない。そういう意識の違いだ」

 ―敵基地攻撃能力の憲法上の問題は何か。

 「敵基地攻撃能力を持つとして、誰が指揮し、どう抑止するかは憲法に規定がない。最高法規の憲法に軍事力抑止の規定がないことは、憲法が軍事力による自衛を考えていなかったからだ。集団的自衛権の行使を容認する政府は、敵基地攻撃能力も集団的自衛の範囲内だと拡大して解釈している。とても大きな問題だ」

 ―辺野古新基地建設の見直し論が挙がっている現状をどう受け止めるか。

 「見直しの議論が自民党内から出るのは良い傾向だが、代替案は国会でその適性を批判的に検討すべきだ。高速輸送能力の話は県内の海兵隊を強化するという議論になり問題だ。自衛隊を強化し、米軍の役割を肩代わりするという議論も、それが憲法の枠内か、話し合う必要がある。石垣、宮古で自衛隊が強化される中、さらに県内に自衛隊を重点的に配備する話になれば問題だ。なぜ沖縄か、地域の声も含めて議論しなければならない」

 ―米議会の小委員会で辺野古の軟弱地盤や活断層への懸念が示された。最終案には残らなかったが、今後に期待できるか。

 「とても重要な変化だ。歴代の知事や民間での長期間の直接的な働き掛けが、目に見える形になった。米国への直接的なアプローチに加え、日本側の意識変革も重要だ」

 ―県民投票の結果を政府はどう受け止め、政策に反映するべきか。

 「結果が顧みられていない。明確な民意が示されたことを国会が受け止め、国会の論争に生かすことが必要だ。一地方公共団体への過重な負担とそれに対する反対の意思を受け止め、政府批判の議論をしてほしい」

 ―県民投票の結果やイージス・アショアの議論、米議会での問題意識を沖縄はどう活用できるか。

 「イージス・アショアの件で日本側の都合で米国との約束を破棄し、対等に交渉できることが分かった。辺野古の新基地建設も不合理性を理解してもらえれば、変更の可能性があるのではないか。米議会で辺野古の軟弱地盤問題が重視されていることが分かった。今後も働き掛けは有効だ」

 「選挙で辺野古新基地建設に反対だと示し続けることで、県民投票の結果も生き続ける。県政の動きも重要だ。辺野古の新基地建設阻止の取り組みが、どれだけ進展しているか明確に示さなければ、県民も反対の民意を示し続けるのは難しい。一票一票が積み重なって反対の民意がある」

 (聞き手 比嘉璃子)

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 たから・さちか 1979年、那覇市出身。北九州市立大大学院博士課程修了。県内大学非常勤講師を経て、2010年から沖縄大人文学部教授(憲法学)。論文に「琉球/沖縄差別の根底にあるものは何か―憲法の視点を交えて」、著書に「『慰安婦』訴訟の意義と課題」など。