野村ホールディングスと米投資ファンド、カーライル・グループの共同出資会社による株式公開買い付け(TOB)を受け入れ、新たな経営体制となったオリオンビール。早瀬京鋳社長に就任1年や今後の戦略を聞いた。
―1年目を自己採点すると何点か。
「社員は100点を付けていい。MBO(経営陣による自社買収)があって、いきなり県外から社長がやってきて、やり方が全部変わって、すごく不安だったと思う。ある社員は『スピード感が今までの3倍だ』と言っていた。それに付いてきて走ってくれた」
「私自身に関しては50点。マイナス面は二つ。最初はいろんなことを否定し、かなり強引に進めた。社員は嫌だったと思う。もっとうまいやり方があったかもしれないと反省している。二つ目は県民の皆さまが『オリオンビールじゃないといけない』というほどの結果を出せなかった。プラス面はCSR室設置とミッションビジョンを社員皆で作ったこと」
―高アルコールの生産をやめた影響は。
「(缶酎ハイの)ワッタはリニューアル前と比べると売り上げは約3倍になっている。高アルコールをやめた影響は全くない。逆にプラスに転じている。予想を上回るペースで売れている」
「高アルコールをやめて健康的に楽しく飲んでもらう文化を創ると宣言した会社が次に何をやるのか、いい意味で社内はプレッシャーを感じている。他の社と同じでいいのか、もっとお客さまが分かるようにするにはどんな方法があるのか。アイデアもマーケティングと製品開発から出ている。オリオンらしい提案をしていくことは、私も含めて社員の使命だ。そうじゃないとまた(大手の)追随型になってしまう」
―資本が変わり「地元のビールではなくなった」という声もあった。それを打ち消すために「沖縄のために」を強調しているのか。
「それは全くない。マーケティングですることは差別化だ。沖縄に県外のブランドが入ってきている中で、オリオンビールが差別化できることは『沖縄らしさ』だ。中高校生でも一番にそう言うと思う。そこを突き詰めていくとどうなるのかをやっているだけだ」
―新型コロナウイルスの売り上げへの影響は。
「グループへの影響は大だ。特にホテルは観光業なので、どうしようもないところがある。酒類事業はスーパーはほとんど影響ないが、4、5月の業務店用売上高は前期比で7~8割減となった。6月から徐々に立ち上がってきていて、予想以上に回復は早い」
「売り上げが下がると普通は緊縮になるが、われわれはこういう時だからこそ投資をする。修正予算を組んだが、完全に攻めだ。お客さまが笑顔になれるキャンペーンを強めに打っていく。製品も増やす。中期経営計画の中の優先順位も変えた。コロナというフィルターがあったので、攻めと守りがはっきりした」
―酒税の軽減措置に対するオリオンビールとしての考え方は。
「先日も県に要請に行ったが、泡盛業界と一緒に県酒類製造業連絡協議会として活動しているので、オリオンビール1社としての個別のコメントは差し控えたい。あくまで協議会としての動きを見ていただきたい」
(玉城江梨子)