【記者解説】県内全域から土砂採取 県外土砂規制の条例回避か 辺野古設計変更


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 名護市辺野古の新基地建設に向けて沖縄防衛局が土砂の採取場所を県内全域に広げたのは、土砂の調達を円滑に進めるためだ。県内調達の割合を高めることで、県外からの土砂持ち込みを規制する県の「土砂条例」を回避する狙いも透ける。工事を前に進めるために、建設反対の民意や環境への影響を軽視する姿勢が表れている。

 防衛局は過去に国頭村の奥港から石材を搬出したが、住民の強い抵抗に遭った。埋め立て用土砂を巡っても、使用する予定だった本部港塩川地区の岸壁が台風で壊れて使えなくなり、名護市安和にある琉球セメントの桟橋を使用することになった。多くの市町村を明記したのは、あらかじめ多くの選択肢を確保し継続して土砂を採取できるようにするためだとみられる。

 本来は大規模な計画変更に当たって自然環境への配慮は必須だが、防衛局は自身が設置した専門家会合にさえ諮っていない。地域ごとに生息生物が異なっている可能性があり、土砂を広範囲で移動させることで各地域の生態系が乱れる危険性がある。特に海を隔てる島同士は注意が必要だ。

 県の土砂条例にはそうした外来生物の侵入を規制する目的がある。だが、条例の対象は県外のみで、県内からの調達土砂は規制をすり抜ける。

 防衛局が使う鉱山や港の周辺では、市民の抗議行動が予想される。防衛局が新たな対象に加えた市町村の採石業関係者の一人は「他の仕事に影響が出る」と述べ、建設反対の民意が強いことを念頭に、辺野古向けの土砂搬出は請け負わない方針を示した。一方で手を挙げる業者も出るとみられ、地域で新たな分断が生じる恐れがある。
 (明真南斗)