不安拡大、従業員「辞めたい」 コロナ禍で揺れる那覇市松山 追えぬ感染経路


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が確認された沖縄最大の歓楽街・那覇市松山。ネオンがきらめく「夜の街」を28日夜に歩くと、6店舗ほどが扉を閉じていた。「従業員の感染が判明」。入り口には感染者が出たため休業することを告げる張り紙があった。周辺で働く人々は、コロナ感染のやり玉に挙げられることに違和感を示しながら「辞めたい」との声も漏れてきた。

新型コロナのクラスター発生に揺れる那覇市松山の飲食店街=28日午後8時20分ごろ

 「コロナの店は…」。話しかけてきた複数の店舗関係者に取材だと告げると、一様にこの言葉が返ってきた。感染者が確認された店舗は松山で働く人たちの間では周知の事実だった。

 同時に聞こえてくるのは「4連休に歌舞伎町からホストが慰安旅行で来ていた」との話だ。感染者が多い東京・新宿からの往来を懸念しているが、現状では県内の感染拡大との関連は確認されていない。

 ドレスアップした女性従業員が接待するキャバクラ店がひしめく松山。女性従業員の写真をネオンで照らした看板を首に提げた、男性従業員の姿が街頭にあった。その顔はマスクとフェースシールドで「完全防備」。視線は首から上に持っていかれた。

 キャバクラ店の多くは入り口で検温や手指消毒を実施するなど感染予防に取り組む。「完全防備」の店舗ではドレスアップした女性従業員もフェースシールドを装着し、ドリンクはストローで飲んでいる。感染防止対策を守る店舗がある一方、ある店舗に入ると男性客と女性従業員が肌が触れあうほど密着していた。口元を覆うものもない。

 「辞めたい」。話を聞いた女性従業員(28)はこう漏らした。来店客の中には酒を飲むときにマスクをずらしたり、隣に座っているのにずっと前を向いて話したりする人もいる。にぎわう店内の様子は、新型コロナの感染拡大前と同じだ。

 この女性は感染経路が追えない事情に気をもむ。休業要請中、女性従業員らは男性客と直接交渉して日銭を稼ぐ「ギャラ飲み」や接待をしていた。さらには営業終了後に「アフター」で男性客と飲みに行くこともあり、店舗が把握できない行動だ。夜も更け、店舗を出ると街はさらに人であふれていた。他の店舗から出てきた男女はそのまま、夜の街に消えていった。(仲村良太)