新型コロナウイルスの感染拡大を受けて沖縄県は30日、那覇市松山で接客を伴うスナックやキャバレーなどに休業要請を実施すると発表した。県内有数の「夜の街」からは、突然の休業要請に困惑の声が上がる。一方で「仕方ない」「どうせ客は来ないから」と諦めムードも漂う。新型コロナの感染者は県内で急激に増えており、先行きの見えない状況が続いている。
30日午後8時すぎ、にぎわいを失った松山のメイン通りは、家路を急ぐ人がわずかにいる程度だった。これまで通りを埋め尽くしてきた酔客や客引きはほとんどいない。店先で開店準備をしていたキャバクラ店の男性従業員(30)は「感染抑制のために協力が必要なのは重々分かっている。ただ、われわれの生活を顧みず、突然休んでほしいと言われても、納得はいかない」と憤る。
男性の店では検温や消毒を徹底し、感染の疑いがある人は確認されていないという。「感染予防に努めている店は松山にたくさんある。一部の店が感染を広げている。休業要請の期間が過ぎても街が元に戻るのかは疑問だ」と話した。
10年以上、市内を走るタクシー運転手の男性(64)は「夏場は盆と重なり客は多かった。この夏はさっぱり」とお手上げのポーズを見せる。繁華街から観光客が激減した今、休業要請で人出が減ればさらなる痛手だ。「夜勤のタクシー運転手は客を求め、結局は松山周辺に集まってくる。内地からの客は怖くて乗せたくないと話す同僚もいるが、客を選ぶ余裕はない。今は客よりタクシーが多い」と視線を落とす。
出勤前の30代女性は「客が東京や大阪から来たと聞くと構えてしまう。休業要請は仕方ない。感染拡大が防げるなら協力したい」と言い、靴音を響かせながら店に入った。
緊急事態宣言が出た4月に働いてたキャバクラが閉店し、別の店舗に再就職した客引きの男性(29)は「子どもが生まれてすぐに店が閉まり苦しかった。店では常連や顔見知りの客以外の入店を断っている。子どもは小さいし、給料補償があるなら仕事は休みたい」と本音を明かす。「今一番必要なものは何か」という問い掛けには「安心かな」ときっぱり。「どうせ税金を使うなら、安心できる環境づくりに使ってほしい」とあきれた表情で笑った。