「珈琲美学」貫き39年、安らぎの場所ありがとう 沖縄市の喫茶店閉店


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ランチタイムに常連客らが訪れる店内=27日、沖縄市中央の「珈琲美学 やま」

 【沖縄】沖縄市中央にある喫茶店「珈琲美学やま」が31日、閉店する。東京出身のマスターと妻の山岸節子さん(79)が沖縄移住後にオープンし、調理人の女性と3人で切り盛りしてきた。創業から約39年。街角にひっそりとたたずみ、地域の人や常連客に「安らぎの場」を提供してきた。新型コロナウイルスの影響などで、その歴史に幕を下ろすことを決めた。

 木製のカウンターに革張りのソファ。ドアを開けると懐かしさを感じる空間が広がる。

 ランチメニューはナポリタンや焼き飯、定食など幅広い。チャーハンを一口ほおばると「これ、これ」と思わず笑みがこぼれた。しっとりとした食感の定番の味。食後に一息ついていると、絶妙のタイミングでコーヒーが運ばれてきた。

ランチメニューの高菜チャーハン

 「ここのコーヒーが一番おいしいのよ」とほほ笑んだのは、開店当初から通う常連客の女性(69)。移住後にマスターが足しげく通っていたコーヒー専門店「原点」の外間也蔵さん直伝の味だ。マスターは外間さんを「コーヒーの師匠」と仰ぐ。

 1990年代の初めごろまで、近隣の商店街は活気に満ちていた。昼時は周辺の保険会社や通信会社の従業員が多く訪れ、客の要望に応えるうちにメニューが増えていったという。複数の会社が撤退し、商店街を歩く人が減るにつれ、地域の人が集う場になった。常連客の女性は「家事と子育ての合間に息抜きする場所だった」と振り返る。

 今年4月、新型コロナの影響で客足が途絶え、店は一時休業した。長年、けんしょう炎に悩まされていた山岸さん。休業時は痛みが和らいだという。「もう潮時だと思った。常連客のおかげで続けられた。ありがとうございました」。31日は午前11時から午後5時まで、通常通り営業する。
 (下地美夏子)