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キングスに新しい風 与那嶺翼元主将、U18コーチへ 「オンリーワン」奮起<ブレークスルー>【動画あり】


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子どもたちにバスケットの楽しさを伝える与那嶺翼さん

 プロバスケットボールBリーグ1部、琉球ゴールデンキングスのアカデミーコーチに与那嶺翼氏(37)が就いた。キングスが今後設立するU-18ユースチームで指揮を執る予定だ。学生時代は沖縄の名将たちの下で技術やリーダーシップを学んだ。コザ中で全国制覇を達成。キングスの主将時代には旧bjリーグで優勝も経験した。沖縄のバスケ、そしてキングスの文化を熟知する与那嶺氏の再びの球団入り。来季でプロリーグ参入14年目を迎えるチームに新しい風を吹かせる。

■家族を思い

 13年のプロキャリアを経て、2019年に現役を退いた。その後、B3岩手ビッグブルズとアシスタントコーチ兼アカデミーコーチとして複数年契約を結び、指導者の道を歩み始めたが双方合意の下、1年で契約解除。背景には、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態があった。

 「いつ何が起こるか分からない」。10歳の息子、8歳と5歳の娘がいる。昨季は家族を沖縄に残して単身生活を送ったが、命を脅かしかねないコロナ禍で「家族と一緒にいることが一番の優先順位になった」。7年ぶりに故郷へ戻る決意をした。

 沖縄でも指導者を続けたいと考えて連絡を取ったのは、キングスを運営する沖縄バスケットボールの安永淳一取締役だった。育成年代でのコーチを申し出ると「誰でもいいわけじゃない。沖縄で選手として、主将としてプレーした経験があるからこそ還元できるものがある」と快諾してくれた。理解を示してくれたキングスや岩手に対し「感謝しないといけない」と繰り返す。「オンリーワンの存在としてやりがいのある仕事だ。思いに答えたい」。U-18で育てた選手がキングスで活躍する日を思い描き「トップチームとの縦のつながりをつくっていく」とチーム力の底上げに向け、奮い立つ。

■恩師の教え

キングスアカデミーコーチの意気込みを語る与那嶺翼さん=7月9日、北中城村のイオンモール沖縄ライカム(大城直也撮影)

 沖縄市出身。諸見小で松島良和氏、コザ中で満島恵作氏、北中城高では新里勲氏の下で腕を磨いた。小中の全国大会でチームを優勝や準優勝に導いてきた沖縄を代表する名将たちだ。

 松島氏の指導で既に高い技術を備えていたが、中学入学当初はまだ精神面が未熟で、練習をサボったり、壁にぶつかるとすぐに諦めてしまったりしていたという。しかし2年時に満島監督が赴任すると「2学年はお前に任せる」と学年ごとの主将に任命され「自分の中で責任感が生まれた」。3年時にチームの主将として全中を制覇。北中城高でも全国を経験し、ここでも主将を務めた。

 コート内外での心遣いや、生活から振る舞いを整える大切さなど、人間的な成長を促してくれた指導者たち。「各カテゴリーで本当に指導者に恵まれた。学んできたことを生かし、心の教育にも力を入れたい」と恩師たちの影を追う。

■B1指揮官へ

 米プロリーグNBAを中心に低身長のラインナップで素早い攻撃を仕掛け、積極的に3点弾を放つ「スモールバスケット」が潮流となりつつある。沖縄が築いてきた「走るバスケ」に通じるものがある。「今のバスケは沖縄の子たちに合っている。沖縄のレベルを底上げし、一人でも多く全国で活躍する選手を輩出したい」と熱っぽく語る。

 指導者の道に足を踏み出して2年目。将来的にはB1で指揮を執る青写真を描く。「まだ初心者マークを張っているようなもの。たくさん勉強して、たくさん失敗して、たくさん試行錯誤して成長していきたい」。持ち前の強い向上心で、一歩ずつ名将への階段を上っていく。

(長嶺真輝)

 

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