【記者解説】感染防止、正念場の2週間 分かりやすい施策の発信を


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 歯止めが掛からない新型コロナウイルスの「感染爆発」に耐えかね、玉城デニー知事はついに警戒レベルを引き上げ、再び沖縄県独自の緊急事態宣言を出した。7月に入り、感染が拡大しても新型コロナの第1波で疲弊した県経済の回復に配慮した政策決定を下してきたが、これ以上、拡大が続くと県内医療体制の崩壊を招くと判断し、政策を転換した。玉城知事は「感染拡大が爆発的に進んでいる。今食い止めなければ、1日、2日遅れただけでも社会的に大きな影響が出る。最も大きな影響は医療体制だ」と危機感をあらわにした。

 県内の新型コロナウイルス感染者数が5日連続で過去最多を更新し、累計感染者数が395人となった31日、玉城デニー知事は緊急事態宣言を出した。7月に入ってから感染者が急増する中、玉城県政が先手を打つ効果的な対策を打ち出せないまま1カ月がたつ。感染拡大防止の取り組みは待ったなしの状態まで来ている。

 4、5月の「第1波」での緊急事態宣言と外出自粛要請で、大きな打撃を受けた県経済を「回復の軌道に乗せたい」という意向が強く働き、県は警戒レベルの引き上げに常に慎重な姿勢を続けてきた。第2、第3波を見据えて、県自ら策定した警戒レベルの客観的な数値の指標よりも「総合的な判断」を優先させ、感染対策と経済の両輪を維持しようと努めてきた。

 リーディング産業の観光の回復を支えようと、国の「GoToトラベル」キャンペーンにも期待を寄せていたが、東京を中心とした国内の感染拡大が続く中、有効な水際対策が取れないまま、結果的には観光や帰省などの人の往来がウイルスの持ち込みや感染拡大のリスクを広げてしまった感は否めない。

 入院患者数や直近1週間の新規感染者数など、指標の数値が急速に悪化していく中、「医療崩壊を防ぎたい」とようやく外出自粛などを県民に呼び掛けた玉城知事だが、突然の緊急事態宣言発出による混乱も予想される。この2週間が感染拡大防止の正念場であるからこそ、玉城県政は引き続き県民に分かりやすい情報発信と施策の整合性の説明が求められている。

(座波幸代)