緊急事態宣言、経済界に不安と理解交錯


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 玉城デニー知事は31日、県内で新型コロナウイルス感染が拡大している状況を受けて県独自の緊急事態宣言を出した。4月の宣言時に比べ、休業や時短営業の要請対象地域が限定されるなど、経済活動に一定の配慮をした内容になった。一方で県民に対しては不要不急の外出を自粛するよう要請しており、観光や消費にマイナスの影響を与えることは避けられない。経済関係者は、県の対応に一定の理解を示しつつも先行きへの不安や補償の充実を求めた。

人が行き交う県庁前交差点

<観光>「どれだけ影響が…」と途方

 多くの学校で夏休みが始まるのを目前にした31日の緊急事態宣言の発表に、観光業界には衝撃が走った。県外からの旅行者に対する来県自粛は要請されなかったが、旅行マインドを悪化させることが予想される。

 那覇市内のホテルでは、直近の1週間で関東方面のビジネス客を中心に1日に10件ほどのキャンセルが続いている。沖縄の感染者が急増しているため、出張の取りやめが多いという。ホテルの総支配人は「さらにキャンセルは増えるだろう」と肩を落とした。

 例年、7~10月で年間の売り上げの約7割を稼ぐというダイビング業界にも大きな影響を与えている。八重山ダイビング協会は近日中に緊急理事会を開き、会員に休業要請を出すか検討する。同協会の安谷屋正和会長が運営するダイビングショップでは当初、8月の利用客が前年の8割まで戻るとみていたが、「Go To トラベル」から東京を除外すると決まって2~3時間のうちに、50件ほどのキャンセルが出た。県の緊急事態宣言後も同様にキャンセル増を予想する。

 今回は観光事業者に営業自粛を求めていないため、営業を休んでも補償や協力金は受けられない。安谷屋会長は「これから一番の稼ぎ時のトップシーズンだ。緊急事態宣言でどれだけ影響が出るか予想がつかない。事業者への補償が必要だ」と訴えた。

<飲食>「一斉の防止策を」とため息

 バーやスナックなどが加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長は「がっかりした。今一斉に手を打たなければ、取り返しがつかなくなる」と深いため息をついた。

 県は接待と接触を伴うキャバレーやスナックなどの休業要請について、那覇市松山地域に限定した。事業者の間では、松山の店舗が全て休業要請に従ったとしても、客や従業員が別の繁華街に移動して感染を広げるのではないかと懸念が広がる。下地理事長は「給付金の残りや金融機関の融資があり、今ならば個人経営者も休業を乗り切れるかもしれない。感染が全県に広がる前に、全県対象に休業要請してしっかりと補償し、スパッと感染拡大を抑えるべきだ」と話した。

 那覇市内の飲食店を対象とした時短営業は、4月の緊急事態宣言時が午後8時までだったことに比べ、午後10時までと拡大された。県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は「午後8時閉店は店を辞めろと言うのと一緒だ。最悪は免れたが県民の外出自粛によって客足は落ちてしまう」と話した。

<娯楽>「まん延なら休業も」戦々恐々

 今回の県の緊急事態宣言では、遊技施設やレジャー施設への休業要請は出されなかった。業界団体は、感染源とならないように対策を徹底するよう事業者に呼び掛けている。

 県遊技業協同組合の山田聡専務理事によると、県内では5月の営業再開後、パチンコ店での感染は報告されていないという。山田氏は「ガイドラインは最低限のことで、各店でそれ以上の対応を取るよう通達している。まん延すれば休業を余儀なくされるため、戦々恐々としている」と話す。

 ボウリング場ではボウルやシューズの消毒を徹底して営業を続けており、客が戻り始めているという。県ボウリング場協会の米須義明会長は「緊急事態宣言には不安もあるが、固定客は戻っている。感染者を出さないような取り組みを徹底していくしかない」と話した。