【識者談話】武田智夫氏 国が予算で本気の支援を


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武田智夫氏

 前回の緊急事態宣言に比べても、県外からの旅行者に渡航自粛ではなく「慎重に判断」を求めることや、飲食店の時短営業を那覇市内に限定し時間も午後10時までとするなど限定的な内容だ。苦境に立たされている県内経済界にかなり配慮したという印象だが、それでも経済には大きなダメージが生じるだろう。

 8月は例年、沖縄観光のトップシーズンで、一番の稼ぎ時を新型コロナウイルス感染拡大が直撃した形だ。影響は計り知れないほど大きい。

 今年はもともと夏場の予約が鈍い。ホテル業界に聞くと、7月の週末や4連休は客室稼働率がそこそこ高かったようだが、平日はまだ少ない。8月もキャンセルが発生するなど芳しくない。9月は予約ベースでは回復の動きがみられていたが、宣言によって旅行者心理に影響を及ぼし、秋口以降の旅行にもキャンセルが発生する恐れがある。

 県内消費にも大きな影響が出る。4月から5月にかけての緊急事態宣言では、地元客が多く訪れる飲食店なども影響を受けた。店舗が閉じれば食材や商品を納入する業者にも影響が広がる。

 前回は公的な支援を活用した事業者が多かったが、今回は県独自の宣言で、支援制度がどうなるのか気がかりだ。国が支援制度などに予算を配分し本気で取り組まないと、観光や飲食事業者はさらに厳しい状況になってしまう。

(りゅうぎん総合研究所調査研究部長)