「ウイルス付いていたら」 不安抱え、基地で働き続ける日本人「エッセンシャルワーカー」


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米軍基地内の労働環境について、取材に答える基地従業員=7月27日、本島中部

 県内の米軍基地内で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、基地内の社会生活の維持に不可欠な仕事に就く「エッセンシャルワーカー」は、感染の不安を抱えながら業務を続けている。在日米軍は自然災害やテロなど緊急時に基地内で業務に当たる職種を「ミッション・エッセンシャル」と定め、基地への立ち入り制限時も業務の継続を求めている。基地内の清掃業務に携わる従業員が2日までに琉球新報の取材に答え、不安な胸の内を明かした。

 4月初旬、県内の米軍基地で働くこの従業員は、米国人の上司から一枚の文書を渡された。「これにサインするように」。全て英語の文書には「基地内のロックダウンが3日以上続いた場合は4日目から出勤し業務を継続すること」と記されていたという。日本語訳はなく、通訳による簡単な説明のみ。わずか5分ほどの出来事だった。

 7月上旬、基地内で米軍関係者の新型コロナ感染が数多く確認され、状況は徐々に悪くなった。従業員の脳裏には、米国人の上司から示された文書がよぎった。「(基地内が)こんな状態でも出勤し続けるのか」。感染防止用の作業着などが従業員に支給されることはない。ごみとして出されたペットボトルなどを分別しながら「唾液にウイルスが付着していたら」と、不安は高まる。米軍関係者を対象としたPCR検査の現場に出くわした従業員もいたという。

 同僚の一人は休業について上司に相談したが「エッセンシャルワーカーだから」と、取り合ってもらえなかった。従業員は「不安を感じる従業員の休業補償を認め、安全に働ける環境にしてほしい」と訴える。

 兵士用の食堂、食料品店、ゲートの警備員などの職場も同様に、出勤継続を余儀なくされている。基地内のスーパーで働く男性は時短営業を求めたが、会社側は全く聞く耳を持たないという。男性は「働く人の立場に寄り添ってほしい。日本政府の責任もある」と雇用主である防衛省にも対応を求めた。

 米軍は本紙の取材に、ミッション・エッセンシャルの条件に基づき「日本人や米国籍にかかわらず、全てのエッセンシャルワーカーに承認を求めている」と回答した。一部の従業員にはテレワークを推奨し、勤務人数を制限しているという。沖縄防衛局は「基地従業員の安全について米軍と連携し、不利益を被ることがないよう適切に対応する」としている。

 全駐労沖縄地区本部の平安名守書記長は「日本人従業員は感染者に関わる業務を一切行わないと、米軍からも回答を得ている。防衛局は当事者意識を持ち、労働環境の改善に取り組んでほしい」と求めた。 (下地美夏子)