「非公開前提の検討だった」 2021年の32軍壕調査 専門家と認識にずれ


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 第32軍司令部壕に関して、専門家から保存や公開に前向きな意見が出されていたにもかかわらず、県の報告書は「現状のままで公開は困難」と結論付けた。当時、県平和・男女共同参画課の課長だった原田直美氏は本紙の取材に対し「公開できないということを、再チェックしておこうという調査・検討だった。予算的にも厳しく簡単に公開できるものではないので、そのための情報をそろえておくということだった」と説明した。

 第32軍壕の公開は困難という県の方針を補強するための調査事業だったといい、結論は知事まで決裁を上げずにまとめたという。公開困難という方針を決めた経緯について、原田氏は「大田知事が1997年に公開の結論を出したが予算に問題があり、その後、議論された様子もない。いつ誰がどの時点で決めたのかは分からない」と話した。

 当時、専門家として調査・検討に加わった黒田登美雄・琉球大名誉教授は「委員会としては、牛島満司令官のいた陸軍壕は強度としては、きちんとした造りになっているから大丈夫という結論だった。観光資源として公開するとすれば、エレベーターを付けるなど工事が必要になるという話があった」と振り返る。公開が難しいと結論付けられた経緯について、「『見せ物にするのは壕の中で戦死した方に失礼では』との意見があるということを聞いたように記憶しているが、詳細は分からない」と話した。