<総評>投打充実の八重山、準優勝KBCは新チームに期待


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2020県高校野球夏季大会で優勝した八重山高校=2日、名護市のタピックスタジアム名護

 2020県高校野球夏季大会は、ノーシード同士の頂上決戦となり、強力打線の八重山が夏の県大会で初優勝を遂げた。春季は2回戦敗退だったが、夏は一気に頂点へ上り詰めた。敗れたKBC未来だが、夏の県大会では最高成績の準優勝という結果を残した。3年生5人で1、2年生主体のチームだが、選手層が厚く接戦を勝ち抜いてきた。この悔しさを胸に、新チームの成長にも大きな期待が寄せられる。

 新型コロナウイルスの影響で各チームとも練習不足やモチベーション維持などさまざまな課題があった大会。しかし、高い集中力でサヨナラゲームや延長タイブレークなど白熱した戦いが繰り広げられた。3回戦までにシード3校、昨年の選手権沖縄大会覇者の沖縄尚学、準優勝の興南が敗退。KBC、日本ウェルネスの新興勢が躍進した。8強入りした中には10年ぶりの沖縄水産や5年ぶりの普天間などが顔をそろえた。

■粒ぞろいの投手陣

 八重山はスライダーやチェンジアップなど変化球でカウントを稼ぎ、最速137キロの直球で仕留めるエース・砂川羅杏(らいあん)を筆頭に、制球力の良い投手陣が力を発揮した。マスクをかぶる比嘉久人が好リードし、強肩も発揮した。

 失策は6。序盤に多く、立ち上がりに課題が残った。ただ、それらをカバーするように内野陣のフィールディング、相手打線を分析したシフトなど、守備で対応が光っていた。

 KBC未来は初登板が決勝の大舞台だった1年生の大城元が136キロの直球に、角度のあるスライダーを武器にデビュー戦とは思えないマウンドさばきを見せた。3年生が特に多く起用された大会で実戦に出た1、2年生には大きな経験となっただろう。

■飛躍した打撃力

 八重山打線には集中打でビッグイニングをつくる勝負強さがあった。上位から下位までむらがなく、盗塁などを絡めて単打で生還する場面も多かった。春から1日千本のスイングを課した成果を選手たちが実感しているようだった。

 KBCは3回戦、準々決勝と1点差をものにして勝ち上がった。打線はしぶとさに加え、準決勝で見せたように爆発力が飛び抜けていた。

 各チームに制球力が良い投手が多く、打撃は全体的に低調だった。ただ、春に比べフライアウトが減り、鋭く伸びる打球が多くなった印象を受けた。それぞれの投手のスタイルに早めに応じて攻略する対応力を見せるチームもあった。4強入りした日本ウェルネス、美里工は選球眼や器用な小技が光った。

■自主性重んじる

 八重山には、15年の美ら島学童軟式交流大会、17年の全国離島交流中学生大会で優勝を経験したメンバーもいた。実力ある選手らに兼島兼哲監督は「自主性を重んじて、私は助言するだけ」との指導方針で練習メニューや戦術なども選手自ら考えた部分も多かった。

 八重山は1988年の全国選手権沖縄大会での準優勝以来の決勝進出で、夏悲願の“初優勝”を遂げた。2年生にも運動能力の高い選手がおり、今回の経験を刻んだ新チームにも期待できそうだ。
 (上江洲真梨子)