子連れトイレの「恐怖体験」解決しました サンエーが目指す当事者目線


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子ども用イスの側にある鍵のほかに、もう一つ上部に鍵が設置されている=サンエー浦添西海岸パルコシティ

 トイレの個室で備え付けの子ども用のイスに子どもを座らせ、自分は用を足そうとしたら、子どもがドアの鍵を開けてしまう―。こんな“恐怖体験”をしたことがある人は少なくないのでは。「子育てあるある」の一つとも言えるこの問題が最近、解決されたのをご存じだろうか。

 トイレの個室には子ども連れの人が困らないように、2歳半以下の子どもを座らせるイスが備え付けられていることが多い。しかし、このイスの位置がちょうど、鍵のそばにあり、手が届く範囲にあるため子どもが開けてしまうのだ。

 このような声を受けて、サンエーは数年前から子ども用のイスのあるトイレは、通常の鍵に加え、上部にもう一つ鍵を付け、二段ロックにした。「イスの位置は変えられない。それなら上にもう一つ鍵を付ければいい」という判断だった。

 サンエーは毎年、業務全般に関してパートやアルバイトを含む全従業員向けのアンケートを実施している。開発部の儀保芳之開発企画担当部長は「お客様に一番近いところにいるのは店舗スタッフ。店舗スタッフの声はお客様の声でもある」と強調する。

 障がい者トイレも当事者の声を反映させた。障がい者トイレには本人だけでなく、介助者も一緒に入ることが多い。「介助者とは言え、用を足しているところを人に見られるのは恥ずかしい」という当事者の声を受け、個室の中をさらにカーテンで仕切れるようにした。

 トイレの心地よさは売り上げには直接つながらないが、同社広報は「商品を販売している施設自体が快適であれば、多くのお客さまに足を運んでもらえ、結果的に売り上げにつながっていく」と説明する。

 県経営者協会女性リーダー部会の富原加奈子会長は、勉強会などでサンエーのトイレを「消費者志向を意識している象徴的な事例」として紹介している。「潜在ニーズ、的を射た対策は当事者でないと分からないことが多い。提案されたことを理解し判断するにも当事者の目が必要となる。アフターコロナ、ウィズコロナ時代を生き抜くには固定概念にとらわれない対応が求められる。多様な課題に気付く女性の管理職、経営者がますます重要になってくる」と指摘した。

(玉城江梨子)