<深掘り>政府、沖縄のコロナ状況に懸念相次ぐ それでも緊急事態宣言は「困難」


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 【東京】県内で新型コロナウイルスの感染者が突出して増加している中、政府の各種専門家会議で沖縄に言及する場面が相次いでいる。政府は県の求めに応えて沖縄で不足する医療従事者を派遣するよう全国知事会に呼び掛けるほか、政府からも職員派遣を決めるなど対策を強める。一方で、観光支援事業「GoToトラベル」の対象から除外することや、国の緊急事態宣言発出など、政府の判断でできる対応の実施には慎重姿勢だ。

会見で沖縄の感染状況を説明する西村康稔経済再生担当相=8日、東京都の内閣府

 「沖縄は二つの指標でステージ3、他の二つの指標ではステージ4に入っている」。7日にあった政府の新型コロナウイルス対策分科会終了後、感染の進行状況を4段階で示す「ステージ」とその目安を発表した尾身茂会長は、沖縄の感染状況について強い懸念を示した。地方にとって「ここに書いている指標は(ハードルが)高めだ」(平井伸治鳥取県知事)と指摘する内容でも目安を大幅に超過している項目があり、沖縄の感染状況の悪さが改めて浮き彫りになった。

 全国知事会が8日に取りまとめた緊急提言では、GoTo事業について「対象地域の範囲、時期、方法などについて、これらの基準などを明確にした上で、除外地域などを機動的に見直すこと」を求めており、人の移動を促すような政府施策への懸念は強まっている。

 一方、西村康稔経済再生担当相は8日の会見で沖縄の状況について「ステージ3の指標で、病床(使用率)をはじめ、いくつか(警告ランプが)ともっている」と述べたが、ステージ4には言及しなかった。

 緊急事態宣言の是非については、前日の分科会でも「宣言を出さなきゃいけない状況だという議論はなかった」と強調した。GoTo事業には「旅する側も、受け入れる観光施設やホテル側も感染防止策を講ずれば、感染リスクは低い」として、あくまで推進していく考えを強調した。

 与党関係者は最大のマーケットである東京都が事業から除外された中で、夏場の旅行先として人気を集め、地域経済に占める観光業の割合が高い沖縄も外すとなれば「GoTo事業の意味がなくなる」と除外しにくい背景を語った。

 西村再生相は7日の会見で「重症化する人、亡くなる人をとにかく最小化する」と述べ、政府の新型コロナ対策が重症者対策にシフトしていることを印象付けた。一定の感染者が出ることを織り込みながら、経済活動の再開を進めるのが政府の方針だ。

 政府関係者は4~6月期の国内総生産(GDP)が年率換算で20%を超えるマイナスが予想されていることに触れ、緊急事態宣言の影響の大きさを指摘する。感染者は若者が中心で死亡率が低いこともあり、宣言を再び出して「経済全般を止めるのは、もう日本には困難だ」と話す。

 一方で、在沖米軍での感染拡大は大きな懸念材料となっている。国立感染症研究所は、沖縄で広がっているウイルスが東京由来が多いのか、米軍由来が多いのかを調べるため遺伝子解析を進めている。新型コロナ対応に当たる政府関係者は「沖縄は夜の街のクラスター対策が中心になっているが、米軍由来が多いとなれば、別の対策が必要になる」と述べ、事態を注視する姿勢を示した。

(知念征尚)