「今行っても大丈夫でしょうか」 ハイシーズンに相次ぐキャンセル…沖縄・宿泊施設の今


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
宿泊客に備えて掃除するtintotintoの江本祐介さん=8日、今帰仁村渡喜仁

 「トップシーズンに感染者100人超えはタイミングが悪すぎる」。県内老舗ホテルの経営者は絶句した。例年なら8月だけで1年の3分の1を売り上げるが、今年はキャンセルが相次いでいる。秋の修学旅行シーズンが頼みの綱だが、それも雲行きは怪しい。

 国内で新型コロナの感染が拡大した4月以降、ホテルを休館した。営業を再開した今も出勤者を減らすなどシフト調整を余儀なくされる。「休業補償はありがたいが、お客さまを相手にしてなんぼの商売だ。客がいないのが精神的にこたえる」と語り、研修などで何とか従業員のモチベーション維持に努めている。

 現在の感染拡大の由来は明らかではないが、「Go To トラベル」が始まった7月の4連休以降、感染者が急増している状況がある。政府が観光業界を救おうとしていることはありがたいが、「施策が全部裏目に出ている」と感じる。

 一方で、経済か、感染拡大防止かの二択ではなく、経済を回しながら感染拡大防止を図る「ウィズコロナ」の方向性は間違っていないとも思っている。「そうでないと観光に支えられている沖縄経済は死んでしまう」
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 今帰仁村の「tintotinto」は客室2部屋の小さな宿だ。目の前に海が広がる立地や、沖縄食材を使った朝食、アットホームな接客がリピート客を獲得してきた。

 オーナーの江本祐介さん(42)の元には「今行っても大丈夫でしょうか」と常連客からの相談が絶えない。江本さんは「4~5月に有名人が沖縄に来てバッシングを受けた。そのインパクトが強すぎて、沖縄に行くのが悪というイメージがついてしまっている」と指摘する。

 県民から白い目で見られないか、でも窮地に陥っている宿を助けたい―という気持ちの間で悩んでいることが分かる。
 ここ数日のキャンセル対応で心苦しいのがキャンセル料だ。春は国が緊急事態宣言を出していたこともありキャンセル料を取らなかったが、今は県も渡航自粛までは求めていないため、徴収している。「うちのような小さなところがいつまでも免除を続けると経営がもたない」と肩を落とす。

 2010年の開業以来、毎年夏に訪れていた常連客からも、キャンセルの連絡が届いた。メールや電話ではなく、宿への応援の気持ちを添えた手紙だった。さらに次に泊まれるチケットを購入し、必ず訪れることを約束した。夏のトップシーズンに家族で沖縄に来るには何十万円もかかる。「1年に一度を楽しみにしている人、思いを持った人たちに支えられている」。江本さんは、コロナ禍の中で思いを強くしている。 (玉城江梨子)