シークヮーサー、マンゴーなど沖縄の食材を使った「South&North(サウスアンドノース)」(那覇市)の無添加ジェラート。味と品質の良さが評価され、ホテルや観光施設、大手通販カタログ誌で取り扱われている。運営するあうん堂社長の福田修さん(59)は、元は精密機械の検査装置などのエンジニア。リーマンショックを機に沖縄に移住し、ゼロからジェラート作りに挑戦した。「生産者が思いを込めて作った素材の味が引き立つように作っている」と話す。
上場企業の技術者として全国各地や韓国、台湾などを飛び回っていた。多忙を極め、体にダメージが蓄積していた時にリーマンショックが起きた。職場の雰囲気は暗くなり、励まし合ってきた仲間が辞めた時、福田さんも退職を決意した。新たな挑戦をしようと毎年旅行で訪れていた沖縄へ移った。49歳の挑戦だった。
沖縄のおいしい食材を県外にどう伝えていくのかを考えた時、付加価値を付けて商品化できそうだったのがジェラートだった。自ら農家を訪ねて探すなど、材料に最もこだわった。
独学でのジェラート作りで生かされたのは、仕事で培った論理的思考。うまくいかない時は仮説を立てて実験し、数値を取り、最適な配合を考えていった。
2009年から、他社の設備を借り、小ロットで作り始めた。11年に那覇市内に店舗を構え、自社設備で生産を開始した。沖縄の産業まつりに出展したことでバイヤーの目に留まり、13年にはカタログハウスの「通販生活」に掲載された。星のや竹富島や沖縄美ら海水族館などで販売されるようになった。
順調に事業を拡大してきたが、新型コロナウイルス感染拡大による観光客の減少で、卸先からの発注が激減した。5月の売り上げは前年同月比85%減少した。
コロナ禍の中、以前にもサウスアンドノースのジェラートを掲載した「通販生活」が、苦境に陥っている飲食店や生産者を応援しようと企画した「旨いもの頒布会」で扱うことになった。9月から21年2月までの半年間、毎月2つのフレーバーを各4カップ届ける。限定1300セットの販売で、申し込みは好調という。カタログハウスの森川潤食品事業部長は「研究熱心な福田さんの技術で、無添加でおいしい商品になっている。家に居ながらにして沖縄を味わえると好評だ」と太鼓判を押す。
福田さんは「生産者が作った良い物を届ける循環を作っていきたい」と意気込んだ。
(玉城江梨子)