命守る現場から悲鳴 院内感染や救急制限…沖縄の医療現場、混乱拡大


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
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 新型コロナウイルスは社会全体に広がり、沖縄は「感染蔓延(まんえん)期」に突入した。移入例から始まった感染再拡大は、学校や家庭にも拡散した。医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、病院でのクラスター(感染者集団)や医療関係の感染者も相次ぐ。外来や救急医療を休診する医療機関もあり、現場からは悲鳴が上がる。県は警戒レベルを上げ、緊急事態宣言を延長、県民に「徹底した行動変容」を求めた。命を守るため、県民は我慢の夏を迎えている。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、院内感染が起きたり救急外来が制限されたりと、県内医療機関に影響が出始めている。玉城デニー知事は13日の会見で「今後、医療機能を制限せざるを得ない状況が中北部など他地域に拡大する恐れがある」と強調した。県は医療提供体制の拡充と感染拡大防止対策の強化を打ち出すが、医療現場では先の見えない状況に不安が広がる。

 13日現在、那覇市内の救急病院2院が救急診療を休止している。一刻を争う救急診療が縮小されると、県民の命に影響する恐れがある。救急医の林峰栄医師は「救急医療の現場では人員も時間も取られ、コロナ以外の患者を診る環境も厳しくなってきている」と説明。「コロナと似た症状がある熱中症の対応などが、さらに厳しくなることが予想される」と危機感を募らせる。

 新型コロナ感染を疑い、PCR検査などを求めて救急外来を訪れる県民が多いことも、医療現場の逼迫(ひっぱく)につながっている。県の糸数公保健衛生統括監は「開いている救急外来にかなり多くの患者さんが殺到していると聞いている」と明かし、13日に今後の対応を県医師会と協議した。県民への啓発に加え、救急外来のなかった診療所や民間病院でも、新たに軽症者の救急対応を実施するなど協力を求めた。

 県にとって、病床数の確保も喫緊の課題となっている。今後、425床まで拡張する考えを示すが、本島南部にある中核病院に勤務する医療関係者からは限界との声も上がる。「十数床空けるだけでもやっと。やるしかないが、医療資源に限界はある」と苦しさを吐露する。

 新型コロナの感染者が増え続ければ入院患者の退院促進や医療提供サービスの低下など、一般県民にしわ寄せが行く可能性がある。「患者を増やさないための施策をお願いしたいとしか言えない。実際に病床を空けてもそこに従事する看護師を教育する時間も考えると負担は大きい」と、これ以上医療現場が逼迫しないような対策を要望した。