新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むため、県が1日独自の緊急事態宣言を出したことを受け、県内の博物館や美術館、ギャラリーなどは休館や休業などを余儀なくされている。県の最初の緊急事態宣言(4月20日~5月31日)時と違うのは、防止対策を取った上で開く施設があることだ。それには館長らの「芸術の火を絶やしてはいけない」「心の支えにしてほしい」という願いがある。加え民間は観覧者激減でも開けることで何とか存続したいという切実な思いもある。開館や営業を続ける浦添市美術館、佐喜眞美術館、ギャラリーアトスに思いを聞いた。
■浦添市美術館
浦添市美術館は常設展などを鑑賞できる状態を維持している。前回宣言時は休館の期間もあった。今回の宣言が出た1日時点では、浦添市の警戒レベルが全4段階のうち第3段階で、すぐに休館が決まる段階ではない。対策を施した上で鑑賞できる環境の維持を市として判断した。
来館者には受付で検温し住所や氏名を確認。マスク着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)に配慮して鑑賞するよう呼び掛け、一つの部屋に人が集中しそうになる場合は、職員が声掛けして分散するよう協力を求めている。展示室では、来館者が通常は触って体感できる展示品をケース内に移し触れないようにした。換気のため扇風機を設置した展示室もある。
美術館が果たせる役割について宮里正子館長は「美しい物を見てもらうことで人を元気にする力がある。現物とゆっくり対面してもらうことが美術館の役目だと思う」と語る。
市主催の常設展、記念展などは開催する一方、展示室を他団体などに貸し出す展示会は、主催者から中止の連絡が相次ぐ。開館の継続について市教育委員会文化財課の島袋友木治課長は「葛藤はある」と明かす。その上で「これから長く新型コロナウイルスとつきあうことになる中、できるだけ行政サービスを止めないでいきたい」と開館を継続する理由を語った。
■佐喜眞美術館
宜野湾市にある民営の佐喜眞美術館は2回目の宣言期間が、「沖縄アジア国際平和祭」の二つの企画展の予定時期と重なった。前回は「命を守るため」(佐喜眞道夫館長)と休館したが、今回は体温測定やアルコール消毒液の設置などした上で開館している。ただ状況次第で随時、対応を検討する考えだ。企画展の一環のシンポジウムは主催者と話し来場人数を制限し、ソーシャルディスタンスを確保した上で実施。ネット中継も行っている。
例年だと予約が埋まる9、10月の県外修学旅行が全てキャンセル。「修学旅行で持っているところもあり厳しい」と胸のうちをあかす。来場者は少ないが「こういう時こそ、優れた美術で気持ちを整えてほしい」と話す。
同美術館には1年間何度でも一部イベントを除き無料で入館できる会員証(年会費3千円)を発行する友の会がある。以前からあるが来館者が減る中、告知のフライヤーなどでアピールしている。佐喜眞館長は「見応えのある展示を継続できるため呼び掛けたい」と強調した。
■ギャラリーアトス
アートを展示即売する那覇市金城のギャラリーアトスは前回の宣言を受け、約半年休業した。3~4月、コロナ禍の前から予定していた三つの企画展は中止や延期し7、8月は予定を入れなかった。コロナ禍がいったん収まった後は、県などのガイドラインに沿って対策し開けている。長嶺豊代表は「文化や芸術は必要だ。今後も作家と相談しながら対策した上で開業を続けたい」と力を込める。
オンラインで作品を鑑賞してもらったり、購入してもらったりするギャラリーも増えている。長嶺代表は「実際に本物を見て判断してもらうのが方針だったのでオンラインには対応していなかった。だが今の売り上げではどうしようもない」と長嶺代表。現在、ネットで販売する準備も進めている。
(古堅一樹、宮城久緒)