那覇軍港移設、浦添市長の動向焦点 国「南側」拒否、県交え会談へ


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 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設を巡り、北側と南側の2案が検討されている軍港代替施設の配置場所について、今月4日に国が「(浦添市の推す)南側案は選択しない」との見解を示した。防衛省は北側案で地元の合意を取り付け、移転作業を加速させたい考えだ。南側案にこだわってきた松本哲治浦添市長は「振り上げた拳の下ろし方を探っている」(市関係者)と言われており、松本市長が南側案を取り下げるタイミングが焦点だ。

那覇軍港の移設予定地=15日、浦添市西洲(小型無人機で撮影)

 県と那覇、浦添の両市は18日にも3者会談を開く。南側案を否定した防衛省側の見解を受けて対応を協議することとなる。一方、玉城デニー知事は15日、「突然、代替施設の移設先について国の考えを示したのは、大変遺憾だ」と国に不快感を示すコメントを発表した。

■反発

 県と那覇市、浦添市は2019年11月、事務方同士の検討会議を発足させ、民間港湾としての計画案を20年度中に固める方針で話し合っている。県や那覇港管理組合の関係者は地元の意向が一定程度、尊重されると認識していた。

 だが今月4日、田中利則沖縄防衛局長らが県や両市に対し、米軍の意向を引き合いに南側案は技術的に難しい旨を伝えた。

 玉城知事は15日のコメントで「なぜこの時期に国の考えを示したのか」「民港の港湾計画との整合性が図られるのか」などを、今後防衛局に確認していく考えを示した。城間幹子那覇市長も「なぜと思った」と語った。

 翁長雄志前知事は那覇市長時代に自ら進めてきた那覇軍港移設に反対の立場をとれなかった。そこで、辺野古新基地建設については反対で一致するが、那覇軍港は「同じ港湾内での移動」として切り分ける解釈を取った。

 この解釈を玉城県政も踏襲しているが、県政与党内にも軍港移転に反対がある。松本市長が南側案を主張することで実質的な議論は滞っていたが、軍港配置が北側案に集約していくと、軍港移設に対する県の姿勢も改めて問われてくる。

■選挙

 松本市長は1期目は軍港移設に反対を掲げて当選したが、任期途中で浦添市側での受け入れ方針を表明。2期目の市長選では、軍港移転と浦添西海岸開発を推進する自民党や経済界の支援を受けて再選を果たした。その後、市のリゾート開発を優先して軍港の配置場所を南側に変更するよう要望し、議論に時間がかかってきた。

 19年12月に菅義偉官房長官は来県した際、日程に那覇軍港の視察を組み込み「早期に結論が得られるよう必要な支援をしたい」と述べていた。関係者は「この問題は官邸マターだ」と説明し、浦添市をせかす意味合いがあったとの見方を示した。

 松本市長は21年2月に現在の任期満了を迎える。市長周辺によると、9月にも3期目に向けて年明けの市長選への出馬表明をする見通しだ。軍港移転で早期合意を求める経済界の声や国からの「圧力」(市関係者)は、松本市長の判断に大きく影響しそうだ。

(明真南斗、荒井良平、吉田健一)