県が2019年度に試算した那覇―名護間を結ぶ鉄軌道の導入コストに対する経済効果「費用便益比」(B/C)が、一部計画で事業化の目安となる1・0を上回ったことを受けて、沖縄鉄軌道費用便益分析検証委員会(委員長・森地茂政策研究大学院大学政策研究センター名誉教授)はこのほど、県試算に一定の評価を下した。1・0を超えたのは入域観光客数1400~1350万人を想定し、那覇―宜野湾間に地下トンネルを敷設して国道330号を通るルートだ。交通計画の専門家が県計画に一定のお墨付きを与えた形となる。
ただ県試算は昨年12月時点での入域観光客数などのデータを用いており、新型コロナウイルスの影響を加味していない。県は具体的に検討する段階の経済や観光の回復状況を踏まえることが必要とした上で「長期的視点と実績に基づく沖縄のポテンシャルを踏まえた場合、今回設定した入域観光客数は現実からかけ離れてはいない」とした。
11日に県庁で委員会が開かれた。県によると、委員からは「フィーダー交通との連携が必要」「駅周辺の街づくりも含む大規模開発が求められる」などの意見があった。
国道58号を通るルートはいずれも1・0を下回った。一方、内閣府も別に費用便益比調査を実施し、昨年9月に結果を発表した。それによると0・69で事業化の目安となる1・0を大きく下回っている。
県は鉄軌道の事業化に向け、全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度の創設を国に要請している。
試算の基となる事業費は一般的なトンネル工事と縮減効果の高い、(トンネルのコンクリート壁部分を現地で施工する)SENS工法を想定した。貨物車や通勤通学などのピーク時も考慮した。県が14~17年度に実施した検討では費用便益比は0・3~0・5程度にとどまっていた。