prime

単身県外へ、負けん気で頭角 愛媛大会で頂点に導く 松山聖陵のエース・平安山陽 <ブレークスルー>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
愛媛県大会決勝 2回2/3で7奪三振の快投を見せた松山聖陵の平安山陽=9日、愛媛県の坊っちゃんスタジアム(愛媛新聞社提供)

 中学で無名だった球児が、単身県外に進学し、負けん気の強さで頭角を現しチームを頂点に導いた。夏の愛媛県大会で4年ぶりの優勝を果たした松山聖陵でエースナンバーを背負った平安山陽(17)(大宮中、宮里ブレーブス出)だ。満員となった甲子園球場でのプレーを夢見て愛媛への進学を決意し、プレーしてきたが、甲子園は中止。高校最後の夏に懸けた熱意や今年の決勝での思いを振り返ってもらった。

■全国レベルに圧倒

 二つ上の兄・航(こう)さんの影響で小学1年から野球を始めた。中学での最高成績は国頭地区のベスト8。中学引退後の育成会で松山聖陵の荷川取秀明監督に誘われ、進学を決意した。中学は投手に捕手、内野手をこなした。高校は「自分が生き残る道は一本や」と投手に。出来が試合展開に大きく影響し、勝敗への責任が大きい分、勝利の喜びも大きかった。

 入学当初は強豪校での練習に圧倒された。アップのメニューからきつく感じた。周囲も名だたるボーイズチームの出身者ばかり。「軟式から入ってきてハンディは感じた。でも、やればできるやろと考えた」。自身を鼓舞し、周囲に食らいつくことに必死だったという。

■力不足実感で奮起

 自分を変えた忘れられない一戦がある。入学直後の2018年5月にあった春季四国地区大会で、前年の明治神宮大会覇者の高知・明徳義塾と相まみえた。4人目で登板した平安山は2死から崩れて2失点し、降板。「1イニングもとれない。やっぱり力がないんや」

 そこから、練習に対する姿勢も変わった。下半身を中心としたトレーニングに徹底して取り組み、投球フォームを熱心に研究した。そうした努力が実を結ぶ。入学時の最速137キロは2年春に141キロ、夏前には143キロへ。より大きく変化するようになったスライダーが得意球になった。「指が掛かっている時は打たれる気はしない。直球よりも自信がある」と胸を張る。3年の夏前に最速146キロに球威を上げた。

 9日にあった愛媛の独自大会決勝。相手は昨年の決勝で敗れた宇和島東だった。七回途中から登板し先頭を討ち取ると、圧巻の7連続三振で優勝を決めた。準々決勝からリリーフ起用された今大会は「やってきたことを信じて投げる。絶対に逃げず、開き直って投げるのが大事」とピンチの場面でも強気の投球を貫いた。最後は磨いたスライダーで空振り三振で締め、夏の頂点の喜びを仲間と分かち合った。

■刺激しあう仲間

「覇気」と書かれた帽子を手に、「ゆくゆくはプロで活躍したい」と将来の展望を語る平安山陽=13日、名護市の21世紀の森公園

 これまで、甲子園出場に全身全霊を注ぎきつい練習にも取り組んできた。練習前、後には「甲子園に行くためにどうしたらいいのか」と常日頃から考え、行動してきた。だが5月20日に夏の甲子園の中止が決まった。「何のために今までやってきたんやろ」。一時は練習に身が入らなかった時期もあった。そうした時期を乗り越えて全員でつかんだ愛媛大会制覇に喜びもひとしおだ。

 「やっと報われた」。県大会を終え長期休暇で一時帰省した平安山は、すがすがしい表情を浮かべる。球場で息子の勇姿を見た父・精進さん(47)は「落ち着いてて堂々としていた」と目を細める。

 甲子園球場で行われた交流試合で12日に登場した鹿児島城西には、大宮中で同級生の上原渉扇と豊里力生も登場した。甲子園で奮闘する姿に刺激されたという。夢に見た甲子園で結果を残した旧友に「うらやましい思いもある。でも、しっかりいいプレーしていてうれしかった」と活躍を喜んだ。

 8月29、30日にはプロ志望の高校生が集う合同練習会がある。平安山は「(同級生に)負けたくない」と闘志をみなぎらせている。さらなる高みを目指す17歳の進化はまだまだ止まらない。
 

(上江洲真梨子)