「貯金は7月に尽きた」 50代女性 派遣終え5カ月 再就職めど立たず  <新型コロナと沖縄>


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生活が苦しくなる一方で「みんなが大変だから焦らない」と話した女性=那覇市おもろまち

 新型コロナウイルス感染症の影響が非正規労働者の不安定な雇用を直撃している。那覇市在住の50代女性は3月末に派遣の契約が切れた。求人が減る中、再就職先を見つけられずにいる。「貯金は7月に尽きた。いつ仕事に就けるか分からないから、借金は増やしたくない」。就職のめどが立たず、先行きが見えない不安を語った。 

 女性は母親と2人暮らし。20代から40代まではホテルで接客をしていたが、8年ほど前にうつ病を患い離職した。以降は生活保護を受給し、約10年かけてようやく働いたところだった。

 2019年9月から病院のデイケアで給食を作る派遣業務に従事し、20年3月末で契約満了となり退職した。感染拡大の影響で求人が減り、就職活動は難航している。以前の職場に戻ることも考えたが、感染拡大でデイケアは利用中止となり、仕事量や就業時間は半減した。「少ない時間を働くよりもスキルを身に付けたい」と別の道を考えた。

 現在、単発のバイトや日雇いの働き口を探しているが、仕事は見つからない。「スキルがないから仕事の幅も狭まる。コロナで現場も教える余裕はなく、企業は即戦力を求めている」と寂しそうに話した。

 離職を機に生活保護を申請したが、貯金や特別定額給付金で預金残高が増え、11月まで受給は先延ばしになった。同時期、県外で働く弟が派遣切りに遭った。「弟には読み書きができない障がいがある。再就職先を探すのは弟の方が大変だ」と、女性は母親の分と合わせた特別定額給付金20万円を弟に送金した。

 預金は7月に底を突いた。見かねた母親が那覇市社会福祉協議会から緊急小口資金を借り入れた。「旧盆が終わるまでの一時しのぎ」と女性はため息交じりにつぶやいた。昨年10月の消費増税、今年6月末までのキャッシュレス決済に伴うポイント還元の終了前にそれぞれ缶詰などの保存食を買い込んだ。光熱費数カ月分は手元に残している。「家賃は2カ月ごとで払うつもりだ。自分を少し追い込めば頑張れる。母の年金で食費はつなぐ。でも、家賃や光熱費は3カ月以上滞納はできない。その間に職を探さないと」と女性は前を見つめた。

 ハローワーク那覇には足しげく通っている。「冬までには仕事を見つけたい」。そう話した表情は期待と不安が入り交じっていた。 (比嘉璃子)