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ハンドボール・東長濱秀希 熟練のファンタジスタ 刺激求め、名門から新鋭へ移籍<ブレークスルー>


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新チームのユニホームを着て、練習に汗を流す東長濱秀希(ジークスター東京提供)

 日本ハンドボールリーグ(JHL)の加入年からここまでの10季で優勝を5度経験、ベストセブンに選出されること6回、2017―18シーズンには最優秀選手賞を獲得。東長濱秀希(浦西中―興南高―日体大出)はデビュー以来、持ち味のトリッキーなプレーを武器に華やかな経歴を築いてきた。そんな国内屈指のハンドボーラーが今オフ、ルーキーイヤーから在籍した名門・大崎電気を離れ、20―21シーズンから新規参入するジークスター東京への移籍を決断した。32歳。「体の衰えは全然感じていない。新しいチームでチャレンジしたい」。また一から栄光の歴史を積み上げるべく、覚悟の「第2章」が幕を開ける。

■「区切り」

 昨季は新型コロナウイルスの影響でプレーオフが中止になったが、勝率1位で優勝し、全日本社会人、国体、日本選手権と合わせて創部以来初の国内タイトル4冠を達成した大崎電気。長年にわたり強豪を先頭で引っ張り、チームを高みへと押し上げたことで「一区切りに感じた」という。シーズン終了後、新たな刺激を求め、球団に「一度視野を広げて他のチームの話も聞きたい」と意思を伝えた。

 オファーがあったチームの一つが、ITコンサルティング「フューチャー」(東京)を親会社とするジークスター東京だ。グループ会社はプロ野球球団へのデータ提供でも実績がある。データ分析や映像解析を駆使し、1年目からプレーオフ進出を掲げ「3年以内の日本一」を目指す。

 「データの活用は海外が進んでいる。いい見本になれれば、日本全体の発展にもつながる」と志に共感した。大都市を拠点に活動することも、競技のファン拡大に寄与できると期待する。「あと何年現役でプレーできるか分からないと考えた時、新しいチームでチャレンジしたいと思った。まだまだできる自信もある」と闘志をたき付ける。

■若手と監督の間で

 メンバーの約8割が25歳以下という若いチームだ。政府による緊急事態宣言明けの6月から体づくりを始め、チーム練習は7月に開始したばかり。今月29日に開幕戦を迎えるが「初戦までにチームが完成するとは思っていない。シーズンを通して意思疎通を深めていけば、伸びしろはどのチームよりもある」とチーム力向上への道筋を思い描く。

 横地康介監督とは大崎電気で共にプレーした仲だ。戦術に対する考え方も理解している。同じく大崎電気を共にけん引した日本代表の信太弘樹や、日体大の同級生であるGK甲斐昭人も移籍した。信頼関係は深い。

 ベテランとして「若手と監督の間に立ってコミュニケーションを取りたい」と役割を見詰める。個人としても「大崎にいた頃と求められることも変わってくると思う。それをやっていけばチーム、個人の成長につながる」と向上心は全く衰えていない。

■学生に希望を

ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で取材に応じる東長濱秀希=18日、東京都江東区のセガサミースポーツアリーナ

 来夏には延期された東京五輪が控え、日本男子も開催国枠で32年ぶりにオリンピックに出場する。代表の活動歴も長いが、12年のロンドン大会は予選で敗れ、16年のリオデジャネイロ大会は予選に臨む代表メンバーから漏れ、悔しい思いを味わった。以前から「選手をやっている以上は五輪に出たい」と語っており東京大会への思いも強い。

 近年は代表招集から遠ざかっているが「年齢も気にしてないし、来年に今よりパフォーマンスが落ちるとも全く思わない」と五輪出場へ前向きに語る。「代表に呼ばれた時に全力を出せればいい。やることは変わらない」と足元を見詰める。

 コロナ禍でスポーツを取り巻く環境が一変し、プレーに込める思いに厚みが増している。学生の全国大会が軒並み中止になる中、リーグ戦開幕が迫る。「学生に希望を与えられるよう、プレーで魅せたい」。淡々とした語り口ながら、言葉にトップ選手としての力強い決意がにじんだ。

(長嶺真輝)