仲井真弘多元知事の陳述書の要旨は次の通り。
【承認】県外移設を求める方針を維持しつつも、飛行場の早期閉鎖・返還が最優先である以上、行政審査を厳格に行い、適法なら埋め立てを承認し移設を推進するのはやむを得ないと考えた。土木建築部長に「自然体で淡々と慎重かつ丁寧に審査をするように」と命じた。政治的なバイアスを掛けず純粋に法律にのっとった審査を行わせたかった。
【撤回】埋め立て事業における実施設計の協議は事業の進捗(しんちょく)に応じて段階的に行うのが通例だ。軟弱地盤が存在するとしても、その工事に着手する前に必要な措置を取ればよく、事業全体を撤回する理由にはならない。県は承認前に統合計画の返還条件を承知していた。(高さ制限など)米国の基準を持ち出すことは牽強付会で、承認撤回は許認可行政を揺るがす。
政治信条や選挙戦略を基礎に承認を撤回するのは行政の長としてあってはならない。適法なプロセスで進められてきた手続きを政治的な立場のみを根拠に否定し、我が国の地方自治行政の法的安定性を損なう。影響は沖縄県にとどまらない。
【県政、名護市政】辺野古移設以外の解決策は存在しないか、20年以上前にさかのぼって日米合意をゼロベースに戻すかしかない。後者は果てしない時間を要し、事実上、普天間飛行場は固定化する。(前知事の)翁長氏は、普天間飛行場問題の解決、基地の整理縮小という県民の真摯(しんし)な願いを利用し、非現実的な世界へ誘った。現県政と前名護市政は辺野古への代替施設建設反対という政治的な主張に縛られ、住民生活を向上、安定させる行政の大切な使命を忘れていた。