台風9号が沖縄地方に接近した31日、多くの人が各地に設置された避難所に身を寄せ、眠れぬ旧盆初日(ウンケー=お迎え)の夜を過ごした。新型コロナウイルスの感染拡大で県独自の緊急事態宣言が出される中での避難に、さらなる不安の声も聞かれた。
避難所の開設に向けて、市町村の担当者は少人数用テントや仕切りを設置するなど、新型コロナ感染防止のためにこれまでとは違った対応に追われた。各避難所では避難者に検温やアルコール消毒を呼び掛け、保健師による問診を行うなど対策を徹底した。
嘉手納町役場内の避難所は世帯ごとに間仕切りが設置された。透析を受けている町嘉手納の米須栄子さん(64)は「基礎疾患がある人は新型コロナに感染すると深刻になるから、自分も気を付けないといけない。仕切りがあれば少しは安心だ」と胸をなで下ろした。
宮古島市は平良庁舎の避難所に、2メートル四方をプラスチック板で囲った個室を20室準備した。市平良西原から避難した平良恵仁さん(83)は、自宅が築60年以上になり「コロナで人が集まるのは避けたほうがいいとは思ったが、今回は風が強いと聞いて念のため避難した」と不安そうに話した。
宜野湾市赤道老人福祉センターではマスク姿の市民らが距離を保ち、静かにテレビを見るなどして過ごしていた。市大山で1人暮らしの知念良子さん(79)は「これまでの避難所は皆で雑談し、子どもたちが騒いでいたが、今回は皆がなるべく接触しないようにしている。避難者も少なくなっていると思う」と語った。
金武町保健福祉センターに避難した仲田文子さん(80)は「実家は西原町棚原だが、今年は台風で旧盆も帰れないかもしれない」と声を落とした。
浦添市や南城市などは室内にテントを設置した。うるま市は避難者が多くなった場合に備え、高齢者や基礎疾患のある人に避難してもらうため市内ホテルに2室を確保した。担当者は「特別な対応が必要な人ができるだけ接触を避けられるようにした。今回が初めてだが、必要性が高ければ今後は(客室確保の)拡大も検討したい」と話した。