北部の拠点港に発展、物流効率化も実現 本部港<息づく街・変わる街並み>⑨


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伊江島と本島をつなぐ拠点、本土航路の中継地としても活用されている本部港=8月26日、本部町(小型無人機で撮影)

 早朝から貨物を積んだリフトが慌ただしく港内を行き来し、伊江港とつなぐ連絡船や鹿児島からの大型フェリーが毎日来航する。本部港(本部町)は物流、観光、離島間の交通手段として欠かせない、本島北部地域の拠点港となっている。

 1975年の沖縄国際海洋博覧会へ向けて、整備が進められた。当時は「渡久地新港」と称し、本部町史によると総事業費は40億円で、5千トン級の船が2隻着岸できる岸壁が整備された。伊江島、伊平屋島、伊是名島の各定期航路ができた(その後、伊平屋、伊是名航路は運天港に移った)。

 県内の離島航路で初となるカーフェリー「フェリー伊江島」は、海洋博開催日の7月20日に運航を開始した。伊江村出身の島袋和幸さん(72)=東京都=は、帰省するたびに島のスーパーにはさまざまな食料品が並ぶようになり変化に驚いた。島から直接車で買い物に行けるようになり「島民は大きな買い物や、病気をしたら名護に行かねばならず、カーフェリーができたのは大変助かった」と振り返る。

1981年に撮影された本部港(沖縄県提供)

 80年には「本部港」に名称を変更。2006年から港湾改修事業を繰り返し、防波堤や岸壁、緑地や浮き桟橋などを整備してきた。かつて県外へ輸送する北部地域の地場産品のほとんどは、那覇港や那覇空港を経由していた。だが現在は、本部港から直接、東京や大阪へ流通させ陸上の輸送コストを低減。物流の効率化を実現してきた。

 国土交通省によると、本部港で取り扱う総貨物量は10年は183万トン、18年には328万トンと1・8倍近く増加した。パイナップルやモズク、カツオ養殖用の飼料、飲料品の容器など内訳はさまざま。12年には港内に1千坪(約3300平方メートル)の大型冷蔵冷凍庫が完成した。「今帰仁すいか」の山城透副組合長は「夏場で1週間と保存ができなかったスイカが、10日以上持つようになった。大変助かっている」と語った。

 「国際クルーズ拠点」に政府から指定されたのは2017年。20万トン級の大型クルーズ船を受け入れられる既設岸壁の改良工事も進めている。

 港で荷役業務を行う北部港運の崎原清社長は「北部地域の特徴を見極めながら商品の品質を確保し、リードタイム(目的地に荷物が届くまでの時間)の短縮を目指したい」、町観光協会の當山清博会長は「北部12市町村の特産品、伝統芸能、食を紹介できる地域づくりを目指し、本部港をその拠点としたい」。まだまだ可能性を秘めている本部港に注目が高まっている。
 (喜屋武研伍)