<記者解説>泡消火剤の蓄積汚染を沖縄県は懸念 米側の防止姿勢に不信感


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 4月に米軍普天間飛行場で起きた泡消火剤流出事故を受け、米軍は汚染の「可能性がある」として格納庫そばの土を除去した。しかし調査結果によると、発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物PFOSやPFOAは、除去部分とは違う地点で高い値が検出された。米軍による汚染除去範囲の合理性に疑問符が付く。県は今回の事故とは別にPFOSやPFOAによる汚染が日常的に蓄積されていた可能性もあるとみている。

 県は当初、米軍が事故後に除去した部分の土が最も汚染されていることを想定していた。だが結果は除去した土よりも下の層、あるいは事故が起きた格納庫とは離れた排水路周辺などの土が高い値を示した。県は「蓄積汚染」に懸念を示している。

 一方、今年になって国の基準値が決まった水とは違い、土壌中のPFOSやPFOA濃度に関する基準はない。今回の調査結果を「評価するのは難しい」(県環境部)との声も聞こえ、調査結果をどう活用していくかが問われる。PFOSやPFOAは環境中ではほとんど分解されず、そのため汚染された土壌から地下に浸透して継続的な水質汚染を招く。実際、普天間周辺の湧水は環境省が定める基準をはるかに上回る値の汚染が判明している。県は泡消火剤を日常的に使う消火訓練施設の付近を含む広範囲の立ち入り調査が必要だと主張してきた。だが米軍は4月の流出事故が起きた地点以外の調査は認めておらず、今回の調査結果では実態解明にはほど遠い。

 在日米軍は保有する泡消火剤をPFOSを含まないものに順次交換するとしているが、実際は遅れが生じていると日本政府が指摘する中で4月の事故が起きた。普天間飛行場では過去にも人為的ミスで設備が誤作動し、泡消火剤が大量流出する事故が起きた。バーベキューが原因で設備が誤作動したという今回の事故原因に対し、県幹部からは汚染事故を防止すべき米側の姿勢に強い不信の声が聞かれる。 (島袋良太)