【独占インタビュー詳報】「沖縄に民主主義はある?」記者の質問に管氏の答えは 


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島洋子東京報道部長(右)の質問に答える菅義偉官房長官=衆院議員会館

 菅義偉官房長官は琉球新報のインタビューで、基地負担軽減や米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について政府の対応を語った。(聞き手・島洋子)

具体的な負担軽減策は?「まず辺野古進める」

 ーー沖縄の基地負担軽減は遅々として進んでいない。名護市辺野古の工事が進み、オスプレイが配備され、県民は負担増強だと感じており、日本政府への不信を呼んでいる。具体的な負担軽減策は。

 「国土の1%に満たない沖縄に約74%の基地を負担していただいている。政府は負担軽減に取り組んできたが、十分ではない。安倍政権は沖縄問題を最優先課題と位置付けて、やれることは全てやるという方針の下、負担軽減を図る」

 「まず世界一危険な普天間飛行場の全面返還に向けて、辺野古への移設を進める。人口が密集する嘉手納より南の米軍基地について、2013年の日米首脳会談の合意に基づき定められた返還時期に沿って、できるだけ早く返還されるよう働き掛けており、実現すればその7割、面積にして東京ドーム220個分が返還される。現に先月末に西普天間住宅地区を返還させた。ここには地元の要望を受けて国際医療拠点の形成を検討している。このほか地位協定に環境補足協定を追加し、3千億円台の振興予算も維持する。政府として約束したことはやる。目に見える形で実現する。できることは全てやるという思いだ」

琉球新報のインタビューに答える菅義偉官房長官=2015年3月31日、衆院議員会館

強行への批判は?「前知事から許可得た」

—ー辺野古では反対運動が激しくなっている。移設作業を強行する政府に対し、沖縄では圧政だという批判も出ている。

 「普天間の固定化は絶対に避けなければならず、政府は一貫してこの問題に取り組んできた。残念ながらこれまでは遅々として進まなかったが、安倍政権は辺野古移設の必要性を丁寧に説明し、2013年、仲井真弘多前知事から埋め立て許可を得た。法治国家として、また、行政の継続性という観点からも国として(工事を)粛々と進めていきたい」

—ー法治国家というところで、農相が知事の作業停止指示を一時停止したが、国自体が当事者になり得るのかという批判もある。

 「岩礁破砕許可の取り扱いについては沖縄防衛局も私人の事業者と異なることはない」
 「知事の処分に不服があれば、申し立てできるというのが、行政不服審査法の考えだ」

琉球新報のインタビューに応える菅義偉官房長官(左)=2015年3月31日、衆院議員会館

「国は粛々と進める」

—ー翁長雄志知事、地元の稲嶺進名護市長も辺野古移設に反対している。それにもかかわらず、今後も法律論を盾に基地を造るのか。
 「普天間の危険除去をどうするかという返還の原点が忘れられている。尖閣諸島や北朝鮮をめぐる状況など、わが国の安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟の抑止力の維持と、普天間の危険除去を考え合わせたとき、国は唯一の解決策は辺野古移設しかないと思っている。普天間は住宅や学校に囲まれていて危険除去は一日も早く取り組むべきで、固定化は避けるべきだ」

—ー県の作業停止指示について。地元の知事がサンゴの調査をするのはまっとうな要求だと思うが、それさえできないのはなぜか。
 「アンカー設置を県と協議した際には、岩礁破砕許可は不要だということだった。那覇空港第2滑走路でも不要という扱いであり、公平性というのがある。国として粛々と進めていく」

—ー翁長知事が岩礁破砕の取り消しも示唆している。政府はどうするか。

「仮定の話に答えるべきじゃないが、行政の長が代わったから、もう一度見直すというのは、どうかと思う。行政の継続性が否定されることはないと思う」

—ー政権交代でもいろんな決定や方針が変わる例は多々あった。

「この問題は政策としてどちらを取るかということではなく、水産資源保護法という法律に基づき、法定受託事務として沖縄県が処理する岩礁破砕許可という事務について、法律の解釈に照らすとどうなるかということ。このまま進めても全く問題ない」

本紙のインタビューに答える菅義偉官房長官=2015年3月31日、衆院議員会館

対話つくらず乱暴では?「丁寧な説明で理解」

—ー長官は翁長知事とも、基地を押し付けられる名護の市長とも面談していない。かつて自民党の政治家は野中広務官房長官、橋本龍太郎首相、小渕恵三首相も「沖縄の頭越しにはしない」と沖縄と対話してきた。長官が師と仰ぐ梶山静六さんは論文「日米安保と沖縄」で「特定の地域、特定の県民だけが、国益のために負担を過度に負うことは民主主義の原理に違反し、やがてはその根本をも覆すことにもなりかねない」と書き「沖縄県民の理解と協力を欠いた日米安保体制はあり得ない」と指摘した。比べて安倍政権は対話をつくらないという点で極めて乱暴に見える。

「それはまったく当たらない。総理には『沖縄のためにやれることは全てやるように』と指示を受けている。先輩の皆さんは大変な努力をされた。しかし私どもは負担軽減を目に見える形で進め、住民にも丁寧に説明することで理解を得ていきたい」

—ー基地の返還で県民はずっと期待を裏切られている。
 「正直なところ、だからこそ国に対して不信感があると思う。私たちは約束したことは必ずやる。空中給油機15機の岩国移駐を実現した。オスプレイの県外訓練も受け入れてもらった。千葉県木更津にオスプレイの整備拠点を置くのを森田健作知事が理解してくれた」
 「沖縄の観光客は2年で120万人増え過去最高の706万人となった。USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)進出の動きもある。国として沖縄振興策で支援していく」

—ー県や名護市と政府の対立をどうするか。
 「4日に開催予定のキャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区返還式への出席のため沖縄を訪問し、その際、翁長知事に面談を申し入れている」

沖縄への差別では?「本土との差はない」

—ー米国ではアーミテージ氏やジョセフ・ナイ氏などの元高官から辺野古移設の見直しに柔軟な意見がある。海兵隊の抑止力にも否定論がある。辺野古だけが解決策ではないはずだ。日本政府が柔軟に第三の道を考えることは。
 「考えていない。辺野古移設は日米両政府で決めた約束だ。日米同盟の抑止力と普天間の危険除去を考えると、(辺野古が)唯一の解決策であり、政府としてはしっかり粛々と進めていく」

—ー沖縄人として聞きたい。沖縄は民主主義が適用されているだろうか。昨年、沖縄は名護市長選、県知事選、衆院選4小選挙区で移設反対の候補者が当選した。名護市議会も移設反対派が多数となった。民主主義国家として選挙で民意を示したにもかかわらず、政府が民意を無視していることに強い疑問を抱いている。
 「それは私の考えと違う。辺野古移設が決定してから埋め立て承認をもらうまで14年かかっている。沖縄県知事から埋め立て承認をもらうまで国として努力してきた。その承認を受けて粛々と進めている。辺野古移設が進まなければ、世界一危険な普天間の固定化につながる」

本紙のインタビューに応える菅義偉官房長官(左)=2015年3月31日、衆院議員会館

—ー承認した知事は選挙で県民から支持されなかった。
 「争点は全て(辺野古移設)問題とは私は思ってない。選挙はいろんな要素が混じっている。それに選挙ごとに行政が変わったら混乱を来す」

—ー県民の強い反対があったからこそ移設は進まなかった。
 「もちろんそうだろう。しかし、結果として危険な普天間(の危険除去)は全く進まなかった。そこはやはり、国としてやるべきだ」

—ー辺野古に反対する県民の方が多い。その声を聞かず工事を強行している。
 「強行ではなく、14年かかって承認してもらったことを進めているということだ。この政権は約束を守る、ということで理解を得られるよう取り組む」

—ー本土では、地元の反対で原発立地が凍結された例が新潟県巻町など複数ある。沖縄では反対があってもできるのか。それは沖縄に対する差別ではないか。
 「本土と沖縄に差は全くない。沖縄からは(知事の)承認を頂いて進めている。行政は継続性と公平性が重要だ」