オール沖縄「顔役」退く 県政与党動揺、背景に「官邸の影」推察も 呉屋氏の後援会長辞任


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翁長雄志知事の自宅を訪ね、知事選への出馬を報告した玉城デニー氏(左)と呉屋守将金秀グループ会長=2018年8月29日、那覇市大道

 経済界の立場から「オール沖縄」の屋台骨を支えてきた呉屋守将金秀グループ会長が「本業回帰」を理由に玉城デニー知事後援会の会長を辞任する。翁長県政時代から「オール沖縄」の顔役の一人だっただけに、呉屋氏の辞任は波紋を広げそうだ。与党内からは超党派の枠組みである「オール沖縄」の弱体化を懸念する声も漏れ聞こえる。

 「引き続きデニー知事を応援する」。9月初旬、玉城知事と面会した呉屋氏は後援会長を辞しても引き続き玉城県政を支えていく考えを強調した。呉屋氏から直接、辞意を伝えられた後援会幹部は慰留したが呉屋氏の意思は固く、翻意することはなかった。

 呉屋氏に近い経済関係者によると、呉屋氏は1年ほど前から後援会長を辞することを検討していた。同関係者によると、名護市の辺野古新基地建設で県と政府との対立もあり、大型の公共事業を巡り県外の大手ゼネコンとの共同企業体(JV)を断られる事例が相次いだという。

 金秀グループ11社のうち建設関連は5社で、その影響は小さくない。

 県政与党幹部の一人は金秀グループを取り巻く環境について「官邸の意向が働いているとしか思えない」と推察する。

 また、感染拡大が続く新型コロナウイルスの影響で、好調だったホテル部門の売り上げも大幅に減少し、取締役会からも「今は社業に専念すべきだ」「会長が先頭に立って苦境を乗り越えよう」などの声が相次いでいた。実際、呉屋氏は本紙の取材に「グループ内でも、とりわけホテル部門の売上高の落ち込みがひどい」と語った。

 呉屋氏の辞任意向を巡る与党内の受け止めはさまざまだ。知事に近い幹部の一人は「玉城知事が就任してそろそろ折り返しの2年になる。呉屋会長の辞任は残念だが、2年後の知事選を見据えて知事を支える体制を刷新強化する機会にしたい」と前向きに捉える。

 別の与党幹部は呉屋氏の会長辞任により、超党派の「オール沖縄」色が薄まることを警戒する。「『オール沖縄』は従来の革新共闘に経済界や保守系政治家が加わった枠組みだ。その経済界の顔役が辞めることの影響は非常に大きい」と話した。

 冷静に受け止める向きもある。与党幹部の一人は「呉屋会長が『オール沖縄』を支えることに変わりない。コロナ禍の中、企業にとっては社業の再生が何より急務で、一喜一憂する必要はない」と語った。
 (吉田健一)