クラスになじめるだろうか、勉強についていけるだろうか―。新型コロナウイルスによる長期臨時休校は、子どもの不安を増大させた。そんな不安を和らげるため、浦添市立沢岻(たくし)小学校(金城孝子校長)は休校中も「オンライン朝の会」などで児童とつながり、学校再開後は授業の遅れを取り戻すより前に、児童の話に耳を傾ける期間を設けた。全教職員が「一人一人が輝く、安心で楽しい学校」の学校目標を掘り下げ、児童に寄り添う教育を試行錯誤で進めている。
休校中、教職員は県教育委員会の施策を読み込み、自身の取り組みに落とし込むための話し合いを続けた。職員室は密になるため、ビデオ会議システムを活用した研修も行った。各学年ごとの会議に参加し、校内で“縦糸”の役割を果たした授業改善リーダーの片桐功教諭は「オンラインを使いながら会議を重ねたことで、新しい取り組みのアンテナが広がっていった」と振り返る。
「オンライン朝の会」も職員のアイデアで生まれた。5月の休校中は健康観察や連絡事項を伝えるのが主だったが、内容も徐々に発展し、8月の休校中は学習内容にも踏み込んだ。
音読やリコーダーの練習のほか、ラジオ体操やクイズなどのレクリエーションも取り入れた。バイオリンが得意な教師は人気アニメ「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」の主題歌を演奏し、児童から喝采を浴びた。歌う教師、ギターを弾く教師も現れた。
課題提出用のオンラインツール「ロイロノート」も活用。「いい天気だから外で縄跳びしよう!」「やってみたよ」など、LINE(ライン)でするような会話も生まれた。1年生の保護者を対象にミニ授業参観もオンラインで実施し、学びの様子を紹介した。
オンライン学習を取り入れたことで、不登校や登校しぶりの児童とつながることもできた。オンラインで皆出席だった児童もいたという。片桐教諭は「これまでは学校に来るか来ないかという100かゼロのつながりしかなかった。オンラインなら80対20、70対30といった関わり方もできる」と、コロナ禍で光明を見いだした。
学校再開後は、慌てて遅れを取り戻すのではなく、逆に授業数を減らして児童の話を聞く「心の黄金週間」を設け、安心できる関係構築に努めた。
児童の話に耳を傾けたことで主体性も育った。6年生はコロナ禍で1年生の不安が大きいことを感じ、1年生を迎える会の開催を提案。給食の牛乳の良さを伝える動画の作成も主張した。学校は児童一人一人から提案を聞き、全て実現させる方針だ。
教職員の取り組みについて、金城校長は「多忙の中、教師集団が主体的に動いた。特にミドルリーダーが果たした役割は大きい」と評価する。家庭の通信環境の格差やオンラインに合った授業方法など課題はあるが「基本は一人一人に寄り添うこと。全身で子どもを受け止めたい」と話した。
(稲福政俊)