憲法に奴隷制度温存の抜け道 囚人にして労働力搾取 <Black Lives Matter運動から見えたこと>④


社会
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 米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)制作のドキュメンタリーフィルム「憲法修正第13条」は、政治家や学者、活動家など有識者らの証言で米国の裏事情が暴露され、目からうろこの内容だった。「憲法修正第13条」は奴隷制度廃止条項だったが、その修正案に付加されている「犯罪者はその類いではない」と言う抜け道があったのだ。

 なぜ黒人の犯罪者が多いのか。それは黒人を囚人にし、新しい形での奴隷制度を作る必要があったからだ。南北戦争が終結した後の南部は経済が破綻していた。400万~700万人近くいた奴隷たちは、自由の身となるが行き場がなく路頭に迷う者が多かった。そこに目を付けた権力者らは、徘徊(はいかい)や放浪といった罪で大量の黒人を投獄した。囚人となった黒人を、その修正第13条の例外として再度奴隷として鉄道建設やインフラ整備の労働力に利用したのだ。

 ドキュメンタリーフィルムの冒頭で紹介されている1915年制作の長編無声映画「國民の創生」では、黒人が白人女性を乱暴し、強盗を働くなど、野蛮な悪の権化として描かれている。何と白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)をヒーローとして登場させ、悪者の黒人を成敗するのである。その映画は大ヒットし、黒人へのイメージを徹底的にダウンさせ、悪人であると印象付けさせるのに成功した。実際にKKKは黒人と言うだけで捕らえ、ゲーム感覚の残虐な方法で命を奪っていった。犯人が見つかっても白人の警察、判事の元で無罪放免となるのが常だった。

 1964年に公民権法が制定されるも、その後も奴隷制に起因するレイシズムは続いていく。

 なぜ黒人の犯罪者が多いのか。ニクソン、レーガン、そしてクリントン政権の頃は、麻薬戦争と戦うのに躍起になった時代だった。政府は「法と秩序」を大義名分に膨大な予算を警察につぎ込み、警官の数も増やした。当時、高額な麻薬を使用する白人は黒人より多かったにも関わらず、黒人が好んで使用する安価なドラッグのみ重刑に処し、囚人の8割以上が黒人という大量投獄につながった。なぜなら警察が黒人の住む地域を標的にし取り締まりを行ったからだ。

 近年、米国ではALECと言うロビー団体が政治家と癒着し、刑務所の民営化に成功し、メンバー企業のCCAという会社が刑務所の運営に関わることになった。囚人が増えれば増える程、企業がもうける形になり、囚人の収容過剰によって新たな刑務所の建設が続く。さらに囚人らを刑務所内の労働力として搾取し「産獄複合体」として大きな利益を得ている。

 なぜ黒人の犯罪が多いのか。それは修正第13条を悪用し、犯罪者を意図的に増やし奴隷制を持続させている、ゆがんだシステムの存在があるからだ。米国の人口は世界全体の5%だが、受刑者数は世界全体の25%。その事実はかなりショックであった。

(鈴木多美子バージニア通信員)