気候変動に具体的な対策を【SDGsって? 知ろう話そう世界の未来】13


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

地球温暖化と気候変動への危機感が世界的に高まっている。一方、SDGs(持続可能な開発目標)の17ゴールのうち、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」の取り組みは経済協力開発機構(OECD)加盟国で遅れているとされ、日本はジェンダー平等などと並んで達成度が最も低い。国内では2050年の二酸化炭素排出ゼロを宣言する自治体が16日現在で全国に21都道府県、132市区町村あるが、県内ではゼロだ。全国にも増して早急な対策が必要な中、ガソリン消費量が少ないハイブリッド車や電気自動車の普及状況と、行政や市民の意識啓発に動きだした市民の取り組みを紹介する。

車社会 CO2排出減が課題

普及するハイブリッド車

車社会の沖縄で地球温暖化を考えた時に、避けては通れないのが自動車の排出ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)だ。自動車保有台数は増加傾向が続いており、1台当たりのCO2排出量をいかに減らしていくかが大きな課題となっている。

 島しょ県で鉄道網のない沖縄では、自動車や航空機など運輸部門のCO2排出量が最も多い。県の発表している2017年度のデータでは県内のCO2総排出量1158.4万トンのうち376.1万トン(32.5%)を運輸部門が占めている。このうち自動車が221.3万トン、航空が123.2万トンとなっている。県内に製造業が少ないことから産業部門は17.1%にとどまる。産業部門が37.2%、運輸部門が19.2%の全国とは対照的だ。

 鍵を握るのは環境負荷の少ないエコカーの普及だ。中でもガソリンと電気を併用するハイブリッド車(HV)の台数は増加しており、12年度の1.9万台から17年度は7.7万台となった。排気量の大きい車種ではガソリン車と比べて燃費性能が倍以上になることもあり、日常的に車に乗る人を中心に選ばれている。

代表的なハイブリッド車で多くのファンがいるプリウス =14日、浦添市の沖縄トヨタ自動車本社勢理客店

 沖縄トヨタ自動車本社勢理客店の松堂守幸店長によると、最近の傾向としては安全性能を優先して車を選ぶ人が増えているという。「(HVを)あえて選ぶというよりは、HVが根付いており、当たり前のようになっている」と説明する。

 同社は12年から毎年、エコドライブコンテスト「燃費王決定戦」を開催するなど、燃費性能の良い運転方法の啓発にも取り組む。松堂店長は「沖縄と車は切っても切れない関係で、毎日通勤や営業で運転する人も多い。燃費の良い車でエコドライブを心掛けることで、環境にとって良いことになる」と話した。

(沖田有吾)


有志で「非常事態宣言」提案

「CEDを出そう!沖縄」結成

 地球規模の気候変動に「何かしたい」と願う神谷美由希さん(30)ら市民と、環境教育に長く関わる専門家の鹿谷麻夕さん(52)が、気候変動対策に取り組む県内初の市民団体「CED(気候非常事態宣言)を出そう! 沖縄」を結成した。メンバーでやりたいこと、できることを話し合った結果、気候非常事態宣言に到達した。宣言では、現状を非常事態と認識し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするための包括的な行動計画の立案・実施を目指す。

 メンバーは温暖化の現状や各地の取り組みを猛勉強し、宣言を求めて県議会や県行政、市町村に働き掛けた。9月からは気候変動に関する県の協議会に鹿谷さんが委員として参加するなど、活動が広がる。

 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんら世界の若者たちの活動を見て、メンバーそれぞれが危機感を募らせていた。神谷さんは昨年9月、世界で同時開催された「グローバル気候マーチ」に参加し、10月に那覇市で報告会を開いた。その場で同様に関心を寄せていた杉山早苗さん(44)らと知り合い、一緒に活動しようと意気投合した。しかし「気持ちはあっても説得力のある理論を持って、活動を方向付けることができなかった」と杉山さん。専門家の助言を探す中で鹿谷さんに出会った。

「CEDを出そう!沖縄」のメンバーが作成した動画の一場面(提供)

 鹿谷さんは1990年代から沖縄の海を見続け、本島中南部でも豊かなサンゴ礁があった時代を知っている。未来に向けた環境教育を長く続けたが「いくら教育しても社会は変わっていない」と行き詰まりを感じ、別の活動を模索し始めていた。「自分の経験で若い人を手助けしたい」と協力を買って出た。

 「個人の活動と、発電や交通など社会全体の変革の両輪が必要だ」として、メンバーの前泊望由紀さん(33)は一般向け動画を作成し公開した。鹿谷さんは「成果はすぐに見えないが、行動すれば100年後は確実に変わる」と呼び掛けた。

(黒田華)


沖縄の気温 100年で1.19度上昇

 沖縄の気候変動監視レポート2020(沖縄気象台)によると、沖縄地方の年平均気温はこの100年で1.19度上がり、上昇幅は世界平均(0.85度)より大きい。1日の最高気温が30度以上となる真夏日は10年で2.7日ずつ増加、最低気温が25度以上の熱帯夜も10年で5.7日の割合で増えている。21世紀末には県内の年平均気温は20世紀末より3.3度上がり、最高気温35度以上の猛暑日は0日から57日に増える予測だ。

 県内では今のところ降水量や台風接近数に明確な変化はないが、世界的には0.5度の上昇でも極端な気象変化を起こす可能性があるとされる。

SDGsとは…
さまざまな課題、みんなの力で解決すること

 気候変動、貧困に不平等。「このままでは地球が危ない」という危機感から、世界が直面しているさまざまな課題を、世界中のみんなの力で解決していこうと2015年、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が決められた。世界中が2030年の目標達成へ取り組んでいく。

 「持続可能な開発」とは、資源を使い尽くしたり環境を破壊したりせず、今の生活をよりよい状態にしていくこと。他者を思いやり、環境を大切にする取り組みだ。たくさんある課題を「貧困」「教育」「安全な水」など17に整理し、それぞれ目標を立てている。

 大切なテーマは「誰一人取り残さない」。誰かを無視したり犠牲にしたりすることなく、どの国・地域の人も、子どももお年寄りも、どんな性の人も、全ての人が大切にされるよう世界を変革しようとしている。

 やるのは新しいことだけではない。例えば物を大切に長く使うこと。話し合って地域のことを決めること。これまでも大切にしてきたことがたくさんある。視線を未来に向け、日常を見直すことがSDGs達成への第一歩になる。