【八重山】石垣島で戦争を体験した潮平正道さん(87)の絵を収録した作品集「絵が語る八重山の戦争」(南山舎)がこのほど発刊された。戦時中に見聞きした情景などを20年以上前から描き、58点を収めた。刊行委員会は写真記録がほとんどない戦時下の八重山の状況が視覚化された貴重な資料だとしており、平和活動などでの活用に期待を寄せている。
鉄血勤皇隊として戦争を体験した潮平さんは、小学校で語り部活動をする中「低学年の児童には講話だけでは伝わりにくい」と感じていた。そのことをきっかけに二十数年前から戦争体験を描くようになった。おととしと去年には描きためた作品の展示会も開催した。
出版に当たり、潮平さんの娘の久原道代さんと孫の望未さんが潮平さんの体験を聞き取り、1枚の絵を短い文章で紹介している。他の体験者が見聞きした内容の絵もある。
潮平さんに出版を提案した刊行委の三木健委員長は「米軍が上陸した本島とは違って八重山では写真がほとんど残っていない。八重山の戦争を視覚に訴える今回の本は、歴史的に意義がある」と強調。「平和教育でどう教えるかという先生の悩みにも応えるもの。学校現場で活用してほしい」と呼び掛けた。刊行委の大田静男さんは「特徴は『アリの目』だ。地をはいずり、逃げ惑う民衆の目で描かれている。平和教育では貴重な参考書になる」と話した。
潮平さんは「戦争の記憶はまだ生々しく残っている。戦争体験者が少なくなる中、本を通して体験を伝えていこうと考えた。八重山の戦争を伝えるにはまだたくさんの絵を描かないといけないと思っている」と語った。
「絵が語る八重山の戦争」は8月15日に出版され、県内書店で販売中。戦時中の関連地図や年表も収めている。価格は1800円(税抜き)。