泡瀬干潟の鳥獣保護区 沖縄市「東部海浜開発に不安」県「工事に影響ない」 


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鳥獣保護区への指定が検討されている泡瀬干潟と工事が進む東部海浜開発事業の建設地(奥)=23日、沖縄市泡瀬

 県が計画する泡瀬干潟の鳥獣保護区、特別保護地区の指定に関して、地元沖縄市との合意形成が課題となっている。市側は、同地域で進める東部海浜開発事業への影響を懸念。桑江朝千夫市長や多数の市議、開発事業の関係団体などの賛同が得られていない。一方、県は指定による開発への影響は低いとの見方を示す。ラムサール条約登録を見据え、その前段である計画案について両者で議論を重ねることが求められている。

 反対意見書

 湿地保全に関する国際条約であるラムサール条約の登録には「鳥獣保護区」の指定が前提条件となり、地元の合意を得る必要がある。保護区内では狩猟が禁止され、特に鳥獣の保護が必要な場合は「特別保護地区」を指定する。特別保護地区内では建築物の建設、水面の埋め立てなどに国や県の許可が必要となる。

 県は2月27日付で対象区域に関して市に意見を照会した。計画案に対し、市は埋め立て工事が進められている人工島や橋りょう、航路などを除外し、特別保護地区は比屋根湿地に限定することなどを求めている。

 市東部海浜開発推進協議会など8団体は、桑江市長と小浜守勝市議会議長に計画案に反対する要請書を提出。市議21人で構成される「市東部海浜開発事業推進議員連盟」も同趣旨の意見書を桑江市長に手渡した。市議による要請の場では桑江市長も反対を明言するなど、市側の反発は強い。市の担当者は「県から規制や許可の基準など具体的な説明がない中で、開発への影響に不安が残る。登録を目指すなら地域への説明が先ではないか」と疑問視した。

 市への説明

 県の松田了環境部長は、人工島は「普通保護区」に当たるため、開発行為の規制はかからないとして「工事に影響を及ぼすことはない」と明言する。市の懸念を払拭(ふっしょく)するため、人工島の保護区除外を含めて市側と改めて協議したい考えだ。

 計画案では陸地と人工島を結ぶ橋の北側や南側、比屋根湿地は特別保護地区となっている。県側は「渡り鳥への影響がなければ許可を得て建設もできる。国土保全のための施設ならば認めないことはない」と説明。ただ、地元からはこの許可制度が将来的な開発計画の“足かせ”になると警戒する声が根強い。

 環境部幹部は「地元は規制のないフリーハンドの状態でいたいのだろう。ただ、実態以上に規制がかかると誤解を招いているのも否めない。丁寧に説明し理解を得たい」として、建設が認められない工作物の事例を説明していく。

 ラムサール条約の締約国会議の開催は来年11月に迫る。早期の合意に向けて議論を進展できるか。課題は山積している。
 (下地美夏子、島袋良太)